真・祈りの巫女248
「梯子はうしろ側につければいい。……80コントが判らない。どのくらいの長さだ?」
 リョウに問われて、あたしはタキと顔を見合わせてしまった。なんとなく、リョウがこういう常識的なことは忘れていないような気がしていたの。考えてみれば、記憶喪失のリョウが長さの単位を忘れていてもおかしくはないんだけど。
 タキは親指と人差し指をちょうど直角になるように開いてリョウに見せた。
「オレの親指の先から人差し指の先までが、だいたい10コントだ。80コントならこの8倍だな」
 そう言って、タキはテーブルに指を這わせて、80コントを示して見せる。
「そうか。……俺が思ってたよりも広いな」
「ああ、それから、オレの身長が103コントだよ。守護の巫女は? 100コントくらい?」
「ええ、ちょうど100コントよ。立ってみた方が判りやすいわね?」
 守護の巫女とタキが立ち上がったから、リョウもテーブルを回って2人の身長を自分と比べた。特に守護の巫女の身長を自分の感覚に刻み込んでいるみたい。それからあたしの方にも視線を向けてくる。
「おまえは? 90コントくらいか?」
「え? う、うん。ちょうど90コント」
「だいたい判った。ありがとう。……祈り台の広さは80コント四方で、高さも70から80くらいでいい。風除けの板の高さは30コントもあれば十分だろう。正面から見て反対側の風除けを30コントあけて、そこに梯子を取り付ける。屋根は雨よけだから形は任せる。……俺は文字が書けないから代わりに書いてくれないか?」
 リョウに頼まれたタキが絵図面に数字を書き込んでいった。すべて書き終えたあと、再びテーブルに着いた守護の巫女にタキが訊ねたの。
「こんなに具体的に話が進んでるとは思わなかったよ。祈りの巫女が村に降りるのは既に決定したのか?」
「そういう訳ではないわ。でも、可能性としては悪くないと思い始めたの。……実際、リョウの言うことはもっともだわ。このさき影のなすがままになってても事態は変わらない。まずは影に一矢報いることが先決だと思うようになったのよ」