真・祈りの巫女246
 カーヤがいれてくれた熱いお茶を飲んで、タキは話に一区切りをつけた。
「それで? リョウは守護の巫女に何を話しているの? あたしが村に降りたいって言ったこと?」
「もちろんそれも含めた、明日の影の襲来に備えた狩人たちの配置なんかについてだよ。昨日リョウが独断で狩人たちに働きかけたことについては、守りの長老を通して守護の巫女には伝わってたみたいなんだけど、具体的に聞いて守護の巫女はずいぶん驚いててね。更に明日祈りの巫女が村で祈るなんて話をしたから、彼女自身どうしていいか判らなくなってるんだ。リョウを村の救世主にしたのは守護の巫女なんだけど、正直ここまでリョウが救世主としての行動をとるとは思ってなかったんだろう。とにかく、誰かに相談したくてしょうがないんだね。本当は名前を持った巫女を全員招集したいんだけど、運命の巫女からはセトを通じて休養願いが出てるし、雨も降ってるから、ひとまず当事者である祈りの巫女を呼んだ、って訳」
 タキの話で、守護の巫女の戸惑いは手に取るように判った気がした。実際、あたしは昨日ずっとリョウと一緒に行動していたのに、それでもリョウの行動にはかなり戸惑ったもん。記憶喪失で、2日前まで怪我人だったリョウがいきなりこんなことを言い出したら、誰だって戸惑うと思う。しかも、リョウは影を完全に殺すことができるんだ。今まで誰にも判らなかった影のことが判ったってだけで、守護の巫女を戸惑わせるには十分だった。
 あたしは、本当はすぐにでも長老宿舎に向かわなければいけないのだろうと思ったけど、1つだけ気になってタキに尋ねた。
「タキはどうなの? あたしが村へ降りて祈ることをどう思ってるの?」
 あたしの質問をタキも予想していたみたいだった。
「昨日はね、話を聞いた直後でオレも反対するつもりでいたし、実際反対してた。でも、昨日から今日にかけてのリョウの情熱にオレも感化されたみたいでね。……今はもう反対するつもりはないよ。その代わり、オレはずっと傍にいて、危険だと思ったらすぐに祈りを中断してでも君を逃がすから」
「……それじゃ、あたしの味方になってくれるのね?」
「祈りの巫女が最大限の安全を確保できる、ってことが条件だけどね。それだけは誰がなんと言おうと曲げるつもりはないよ」