真・祈りの巫女241
 あたしが自分の考えに具体的な結論を出せずにいるうちに、獣鬼の死骸がある南の草原まで辿り着いてしまっていた。そこにはタキがいて、あと何人かの狩人が既に集まってきていたんだ。
「やあ、お帰りリョウ、祈りの巫女」
「待たせたようだな」
「少しね。まだ5人しか集まってないけど、順次くるはずだよ。彼らにはある程度説明はしといた。全員集まってからにするの?」
「いや。時間がもったいないからすぐに始める。タキ、おまえはこいつを宿舎まで送っていってくれないか?」
 リョウに「こいつ」と指差されたあたしは抗議の声を上げかけたけど、タキに先を越されてしまっていた。
「そうだね。もう暗くなるし、その方がいい。……さ、祈りの巫女、帰ろう」
「え? だって……リョウ!」
「明日な。 ―― それじゃ、みんな集まってくれ。まず全員名前を聞かせてくれないか ―― 」
 リョウは憎たらしいくらいそっけなくて、あたしはリョウが狩人のみんなを集めているのを、取り残されたような気持ちで見ていたの。だって、今日はほんとにいろいろあって、それなのに幕切れがたった一言なんてあんまりだよ!
 あたし、それでも少しは期待してリョウの背中を見つめてたんだけど、それきりリョウは振り返る気配がなかったから、タキに促されて仕方なく歩き始めたの。タキはそんなあたしの気持ちを察したみたい。しばらくは何も言わなかったんだけど、やがて草原が見えなくなった頃、少し気を使いながら声をかけてくれた。
「リョウはずいぶん必死だね。今は影を倒すことしか頭にないみたいだ」
 ……あたしだって、ぜんぜん判ってない訳じゃないの。今のリョウには影を倒すことしか頭になくて、ほんのちょっとあたしに気を使うことすらできないんだってこと。
「実際、オレは不思議で仕方がないよ。リョウにはこの村で生まれ育った記憶なんて一切ないんだ。それなのにどうしてあんなに必死になれるんだか。……この村で、ものすごく大切なものでも見つけたのかもしれないよ。 ―― ね、祈りの巫女」