真・祈りの巫女232
 現実的な不安はたくさんある。1番大きな不安はやっぱり、あたしが村に降りることを守護の巫女が許してくれるかどうかだった。それを許してもらうには、あたしが村に降りることのメリットを十分守護の巫女に伝えることができなければならない。あたし1人だけではきっと言い負けてしまうから、まずはタキを味方につけることから始めなきゃならなかった。
 タキと、それからリョウ。だって、リョウの協力がなかったら、あたしが村に降りたとしてもあまり意味がないんだもん。まだ頭の中を完全に整理できた訳じゃなかったけど、とにかく2人に話をしなくちゃって、あたしは神殿を飛び出したんだ。
 もう1つ不安に思うこと。あたしは本当に、祈りを神様に届けることができるんだろうか。守りの長老は、あたしの祈りはちゃんと神様に届いてるんだって、そう言ってくれた。でも、あたしが村で祈っているその時に、あたしの祈りを聞き届けてくれるかどうか、それは神様にしか判らないことなんだ。
 急ぎ足で宿舎へ近づくと、あたしの目に宿舎から遠ざかっていく2人の姿が飛び込んできたの。あたしはあわててあとを追いかけた。2人は村へ降りる道の方へ行こうとしていたんだ。
「リョウ! タキ!」
 あたしの呼び声にほぼ同時に振り返った2人は、足を止めてあたしが追いつくのを待っていてくれた。
「ねえ、どこへ行くの? あたし2人に話があるの」
 答えてくれたのはタキだった。
「んまあ、いわゆる散歩の続きだよ。祈りの巫女は? もう祈りは終わったの?」
「今終わったところよ。ねえ、あたしも一緒に行く。道具を置いてくるから少しだけ待ってて!」
 タキがリョウを振り返ると、リョウは1つうなずいたから、タキも笑顔で許可してくれる。
「判った。ここで待ってるから。あわてないでゆっくり行っておいで」
「ぜったいよ。先に行っちゃダメよ」
 念を押して、あたしは祈りの道具を置くために、宿舎に駆けていったの。