真・祈りの巫女226
 川の水でのどを潤したあと、あたしとリョウは再び神殿へと戻ってきていた。リョウがすぐにでも守りの長老に会いたいと言ったから、あたしはリョウを守りの長老宿舎まで案内していったの。長老の世話係をしている神官に用向きを伝えて待つと、ややあって宿舎の中へと案内された。守りの長老はいつもの会議用テーブルに腰掛けていて、あたしとリョウに隣へ座るよう促したんだ。
「……リョウか」
「ああ。あんたが守りの長老か」
「いかにも」
「まずは、俺をこの村へ受け入れてくれたことに感謝する。俺は村がこんな状態のときに突然やってきた珍客だ。本当だったら疑われて閉じ込められても当然だった」
「そんなことはせぬ。そなたは、祈りの巫女が祈りによって呼び出した救い主、右の騎士じゃからな」
 あたしは長老の言葉に驚いてリョウを振り返った。でも、リョウは驚いた風にすら見えなかったの。
「……やっぱりな。右の騎士というのはこの村の言葉だったんだ」
「右の騎士は祈りの巫女や命の巫女とともに生まれ、その補佐をする宿命を負う。右の騎士リョウよ、そなたには右の力があろう」
「ああ。ローダとかいうババアに力を授かった。最初は何のことだか判らなかったけどな。でもここへきて判ったよ。俺が巻き込まれた出来事の根本はこの村だ。……俺は、この村に辿り着くために旅を続けてきた。この村の災厄を退けるためだ」
 あたしには、この2人の会話が意味しているものが判らなかった。守りの長老が言う右の騎士の力についても、リョウが巻き込まれたという出来事についても。
 リョウはいったい何を知っているの? 守りの長老は ――
「祈りの巫女ユーナよ、この者と2人で話をさせてもらえぬか」
 長老がそう言って、あたしに退席を促した。あたしは戸惑ったけど、リョウは何も言ってくれなかった。
 これ以上聞いていてもあたしには判らないからだろうって、無理やり自分を納得させて、あたしは長老の宿舎を出た。