真・祈りの巫女203
 リョウが言ったことは嘘じゃなくて、あたしがここへきたときにランドと一緒に立っていた場所で、再び狩りの練習を始めてたんだ。先に鉤のついたロープの中ほどを持って、ぐるぐる回しながら木に向かって投げると、鉤を枝に引っ掛けていた。あたしはしばらくリョウの練習風景を見ていたの。最初の頃は2回に1回くらいしか成功しなかったけど、そのうちみるみる上達して、ある程度上手になったところで高い枝に目標を変えていた。
 見ているうちに、あたしはリョウが地道に練習しているところなんて、今まで見たことがないことに気がついた。もちろんリョウが腕のいい狩人だってことは知ってたけど、あたしはリョウが狩りをしているところも、その練習をしてるところも、見たことがないんだ。それはすごく地道な練習で、でもけっして飽きることはなかったの。リョウの上達は早かったから、すぐに高い枝でも失敗しなくなった。
「そんなところで見てても面白くないだろ。家に入ってろよ」
 とつぜんリョウが言って、それがあたしに話し掛けたのだと気づくのに、ちょっと時間がかかってしまった。
「ううん、そんなことないわ。見てるだけでも面白いよ」
「……せめて日陰に座っててくれ。そこに立ってられると気が散るから」
「うん、判った」
 あたし、リョウがあたしのことを気にしててくれたのが嬉しくて、自然に顔がにやけていたの。それからちょっとあたりを見回して、午前中は家の陰になるところに木製の踏み台を引いてきて腰掛けた。
 そのあとリョウは弓の練習を始めて、しばらく経ったときだった。玄関からミイが出てきてあたしを見てにっこり笑ったの。
「ユーナ、ここにいたのね。そろそろお昼にしようと思うの。もちろん食べていくわよね」
「ええ、できればそうさせて。あたしも手伝うわ」
「もうほとんど終わりだから大丈夫よ。ありがと。……リョウ、昼食にするから片付けて!」
 ミイが言うと、リョウはちょっとむっつりしながらそれでも素直に片付けていて、あたしはなんとなくリョウがミイの子供になってしまったような錯覚を覚えたんだ。