真・祈りの巫女202
「怪我なんかもう治ってる ―― アウッ!」
 ランドがリョウの肩のあたりをちょっとつねると、リョウは悲鳴をあげて、それきりもうなにも言えなくなってしまったの。ランドはあたしとミイに手を振って、扉を出て行った。ミイもリョウも見送ろうとしなかったから、あたしは1人だけ追いかけていったんだ。
「ランド、気をつけてね。それからありがとう」
 坂道の階段の手前で振り返ったランドは、空いている方の手であたしの肩を抱いて言った。
「リョウはすっかりガキの頃に戻っちまったな。狩人の修行を始めた時のリョウがあんな感じだったよ。オレの都合なんかまるで考えてねえの」
 あたしはその頃のリョウを知らない。一緒に遊ばなくなって、すごくさびしかったことだけ覚えてるの。その時のあたしの寂しさなんて、今のあたしの寂しさとは比べ物にならないよ。だって、今のあたしには、リョウに愛されてた時の記憶があるから。あたしが目の前にいるのに狩りのことしか考えてないリョウなんて、お互いの気持ちを打ち明けてからは初めてだったんだ。
「気にするな、ユーナ。今のあいつは狩りのことしか見えてねえけど、そのうちおまえの存在にも気づくだろ。リョウもおまえもなにも変わってないんだ。心配しなくても、リョウは必ずおまえを好きになる」
「……リョウは変わってないって、そう思う? あたしのことを好きになってくれるって」
「ああ。リョウを信じていろよ。……おまえ、リョウにはもったいない女になったな。あのヘチャが」
 ランドがからかうようにそう言ったから、あたしはちょっとむくれたの。そのまま笑いながらランドは仕事に行ってしまって、再び家の扉を開けると、あたしと入れ替わりにリョウが家を出るところだったんだ。
「リョウ、どこへ行くの?」
「……別にどこにも行かない。心配するな」
 あたしは一瞬ミイと目を合わせて、それからリョウを追いかけていったの。