真・祈りの巫女201
 リョウとランドは立ったまま、ミイが出してくれたお茶を一気に飲み干した。それで人心地ついたみたい。2杯目は2人とも椅子に座って、ゆっくり味わっていた。あたしはそんなリョウにずっと見とれていたの。久しぶりにベッドから起き上がったリョウはすっかり健康を取り戻したようで、額から頬を伝って流れ落ちる汗がきらきらして、あたしの目を釘付けにした。
 リョウはあたしの視線に気がついて、ほんの少しだけ見返したけど、でもそれだけであとはずっとランドと話していたの。リョウはひと通り持っている道具の使い方を教えてもらったみたい。しきりにランドに質問して、ランドも実践での使い方なんかを丁寧に説明していたんだ。
 休憩時間はほとんどそれだけで過ぎていった。あたしはリョウのあまりの熱心さに声をかけることができなくて、ミイとランドもあたしに気を遣って話題を変えてくれようとしたんだけど、リョウの勢いには口を挟む隙間すらなかったんだ。しだいにあたしは疎外感を覚えるようになっていったの。今、リョウの興味は狩りにしかなくて、あたしのことなんかどうでもいいんだ、ってことが判ったから。
 リョウが動けるようになったこと、あたしは嬉しかった。でも、今までそれほど感じてなかった疎外感をより強く感じるようになった。これからのリョウは、好きな時に好きなことができる。あたしはもう、ベッドのリョウを独り占めすることができないんだ。
「 ―― ずいぶん長居しちまった。リョウ、続きはまたあとにしてくれ。……ミイ、弁当は?」
「できてるわよ。はい、これ。気をつけて行ってきてね」
「待てよ。どこへ行くんだ?」
 席を立ったランドをリョウが呼び止めていた。自分の思いに沈んでいたあたしも気がついてランドを見上げたの。
「仕事だよ。そうそうおまえに付き合ってばかりいられねえんだ。村の台所がカラになっちまう。……ユーナ、悪かったな。今度またゆっくり話そう」
「あ、うん、ありがとう」
「俺も一緒につれてってくれ! 実践でこいつを使ってみたいんだ」
「バカ言うな。怪我人は村でおとなしくしてろ。これ以上無茶しやがったらもう来てやらねえからな」