真・祈りの巫女200
「セイがずいぶん取り乱してたから、落ち着いた頃にまたくるって言って、2人ともそれほど長い時間はいなかったの。セイのね、リョウが死んだ時の絶望も、生きてると知ったときの喜びも、記憶がないと知ったときの絶望も、あたしは判る気がするのよ。でも、あたしは昨日1日リョウのことをずっと見てたでしょう? だから、リョウがあんな風に泣いたって、それだけで2人は十分報われてるように思う。……リョウってね、昔からあんまり両親としっくりいってなかった。相性が悪かったのかな。でも、あたしたちに愚痴をこぼしたことなんてないのよ。リョウはリョウなりに必死で両親とうまくやろうと頑張ってた」
 あたしは前にリョウが言ってたことを思い出した。子供の頃、あたしはリョウが両親とうまくいってないなんてぜんぜん知らなかったの。なぜなら、リョウはいつも両親のことを「好きな人たち」と呼んでたから。あたしが祈りの巫女になることで悩んでいた時も、「オレの好きな両親やユーナを守るために狩人になった」と話してくれたんだ。
「あとでランドと話したとき、ランドも同じような印象を持ったって言ってたの。リョウはきっとどこかで両親のことを覚えてるんだ、って。もしも2人のことを覚えてなかったら、あんな風に泣いたりしなかったと思うもの。だって、リョウは人の涙につられて泣くような、そんな可愛い気のある子じゃなかったでしょう?」
 あたし、そんなミイの言い方に、思わず笑いを誘われていた。ミイにとっては、きっとリョウも小さな頃とあんまり変わってないんだ。ランドがあたしを子供扱いするみたいに。
「それじゃ、リョウが記憶を取り戻す可能性もあるってことね。リョウの記憶は完全に消えちゃった訳じゃないんだ」
「両親のことであれだけ心を動かされたんだもの。ユーナのこともすぐに思い出すわ。ランドもそう思ったから、リョウに狩りの仕方を教えることにしたのよ。両親が帰ったあとにリョウとランドはずいぶん長い間話をしてた。ランドなんか、お夕食食べるのも忘れて話してるんだもん。片付かないったら」
 あたしはまた笑って、そのあとミイがランドとのおノロケを披露してくれるのを、ずっと笑いながら聞いていたの。
 しばらくそうして話していると、それまで外で狩り道具の使い方を練習していた2人が戻ってきたんだ。リョウは久しぶりに身体を動かしたせいでちょっと疲れて見えたけど、でも表情はベッドに寝ていた頃よりもずっと晴れやかだった。