真・祈りの巫女198
 タキとローグは、来た時と同じように連れ立って帰っていった。あたしはオミの顔を見に行って、少しねぎらったあと、タキとの約束どおり神殿へ祈りに行った。祈りを終えていったん宿舎へ戻ってから、オミの世話をカーヤに任せて再びリョウの家へと向かったの。その間にも日はだんだん高くなっていて、自然に足が速くなるのが自分でも判った。
 リョウの家近くまで来た時、いつもなら割と静かなはずのこのあたりで、人の声と何か物音が聞こえるのに気づいたの。更に道を降りていくと、音と声はだんだん近づいてきて、やがて視界が開けた時、あたしはその光景にちょっと驚かされていた。
「ランド、……リョウ!」
 リョウの家の周辺はけっこう広く整地されていて、庭のようになってるんだけど、そこで今ランドとリョウが立って何かをしていたの。あたしの声に2人は気づいて振り返った。リョウは両手に狩りに使う道具を持っていたんだ。
「よう、ユーナ。ずいぶん早いじゃないか。神殿の方は片付いたのか?」
 ランドはにこやかにあたしを迎えてくれたけど、リョウは一瞥を投げただけで、すぐにあちらを向いてしまった。
「なにをしてるの? リョウ、もう動いて大丈夫なの?」
「本人は大丈夫だって言ってるな。タキも今日から動いていいって言ったそうじゃないか」
「……ランド、続けてくれ」
 あたしの方へ歩いてこようとするランドを、うしろからリョウが苛立った口調で引きとめたの。ランドはちょっと苦笑して、呆れたように腕を広げて戻っていく。でも、それだけではあんまりだと思ったんだろう。リョウの方を向いたままあたしに声をかけてくれた。
「中にミイがいるから詳しいことは聞いてくれ。これだけやっつけたら少し休憩できると思うから」
 それからはもうあたしがいることなんか忘れたように、2人は話しながら今までしていたことの続きを始めたみたい。リョウは狩りの道具を握っていて、ランドがその使い方を説明しているように見えたの。あたしは2人の邪魔にならないようにうしろを通って、リョウの家の扉をノックした。
 ミイが扉を開けてくれる間にもう1度振り返ると、リョウは真剣な表情で立木に向かって何かを投げたところだった。