真・祈りの巫女196
「 ―― ねえ、祈りの巫女。君は本当に信じている? ……リョウが村の救世主だ、って」
 少し言いづらそうにタキが言って、あたしを驚かせた。
「信じるわ。だって、リョウはあたしに言ったから。俺は影を村から追い出すために生き返った、って」
「本当に?」
 あたしがうなずくと、タキは信じられないように目を見開いたの。
「それを守護の巫女に話したのか? いつ?」
「話してないわ。でも、リョウはもともと右の騎士なんだもん。リョウがそう言ったとしてもぜんぜん不思議じゃないし、守護の巫女がそういう判断を下したのも当然だと思う。だからあたし、リョウが村の救世主だってカーヤに聞いて、すごく納得できたの」
 タキは本当に疑り深いみたい。あたしがそう言っても、少しも納得したようには見えなかったの。あたし、リョウが影と戦うのはすごく心配で、できれば村の救世主なんかじゃなければいいと思ってる。でも、リョウ自身がそうあることを望んでいるのなら、あたしは何も言えないよ。あたしにできることは、リョウが無事でいるように祈りを捧げることだけなんだ。
「……なんか、オレが知らない間にずいぶんいろんなことが進んでたみたいだな。実際そんなに離れちゃいなかったはずなんだけど」
「それだけよ。あとはぜんぜん変わってないわ。リョウの記憶も戻ってないし」
「オレもまたリョウに会わないといけないな。祈りの巫女と一緒に行きたいけど、午前中は用事があるから午後になるか」
 最後の方はほとんど独り言のようだったから、あたしは返事をしなかった。……タキって、自分がなんでも知ってないと気がすまないようなところがあるみたい。その探究心旺盛なところや知識の豊富さにはずいぶん助けられてるから、今まではなんとも思ってなかったけど、これからのことを思うとちょっとだけ不安な気がしたの。
 ちょうどその時、ローグが診察を終えて部屋から出てきたから、あたしたちも話を止めてローグとカーヤを迎えた。
「オミのことでは本当にありがとう。あんなにひどい怪我だったのに、これほど早く元気になったのはローグのおかげだわ」
 ローグは微笑を浮かべて、おそらくあたしにオミの状態を説明するため、食卓のあいている椅子に腰を下ろしたの。