真・祈りの巫女195
 あたしの身体は、いつもよりもたくさんの睡眠を必要としていたみたい。昨日は午後もずっと眠っていたのに、今朝起きた時には既に朝食の時間になっていたの。カーヤに声をかけられて、目覚めた瞬間は戸惑ったと同時にちょっともったいなく思ったんだ。せっかくカーヤと一緒に寝たのに、あんまりお話できなかったから。
「ほんとにすぐ眠っちゃったわね。ずいぶん疲れてるみたいよ。大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。今日はたくさん眠ったもの。それに、カーヤのおいしい料理もたくさん食べたし」
 そんなあたしの言葉に、カーヤは微笑んで、朝食が並んだ食卓へと案内してくれた。
 食事の間はたわいない会話を交わして、食べ終わって少しくつろいでいると、宿舎にはタキとローグが連れ立ってやってきたの。ローグはこのところ毎日午前中にオミの様子を診てくれていて、診察にはカーヤが付き添ってしまったから、あたしは食卓でタキと少し話をしたんだ。
「 ―― 明後日の影の襲撃についてはカーヤに話しておいた通りで、ほとんど付け加えることはないんだ。また前回と同じように村人を神殿の敷地に避難させて、祈りの巫女には神殿で祈ってもらうことになってる。運命の巫女は定期的に未来を見てるから、明後日の午前中はまた会議があるよ。でも、それまでは自由だから、居場所さえはっきりさせておけば宿舎にいる必要はないね」
「それじゃ、今日もリョウのところへ行って大丈夫なのね」
「ああ。リョウは今では村の救世主だし、君がリョウのところへ行くのに反対する人はいないよ。もちろん、祈りの巫女として毎日の祈りを欠かして欲しくはないけどね。実際、君のリョウに関する祈りを疑ってる人がまったくいない訳じゃないから」
 そうか。嘘は真実にはかなわない。必ず真実に辿り着いてしまう人はいる。守護の巫女がどんなに巧みに嘘をついたとしても、それを嘘だと見破ってしまう人が出てくるのはしかたがないことなんだ。
「リョウのところへ行く前にちゃんと祈りは済ませるわ。それに、今はミイがいてくれるから、あたしが泊り込む必要もないし。夕方帰ってきてからもう1度祈りを捧げられると思う。もちろん明日も、明後日もよ」
 タキは微笑んでいたけれど、あたしがそう言っただけではタキの心配事をすべて解消することはできないみたいだった。