真・祈りの巫女190
「……呆れた。ユーナ、そんなことほかで言わないでちょうだい。特にタキ本人にはぜったいに言っちゃダメよ」
「どうして? カーヤはタキのことが嫌いなの?」
「そういうことじゃないの! ……ごちそうさま」
 なんとなくカーヤにごまかされてしまって、それ以上なにも言えなくなったあたしは、食後オミの病室を訪ねた。カーヤがついてきてくれなかったところをみると、もしかしたら怒らせちゃったのかな。でも、あたしはタキとカーヤはすごくいいと思うの。年齢も3歳違いだし、視線で会話してるような気が合うところもあったから。
 病室のドアをノックして、返事がなかったから静かに隙間を作って顔を出すと、予想に反してオミは目を覚ましていた。ベッドに寝転がったまま天井に視線を固定させていたの。近づいて顔を覗き込むと、オミは初めて気がついたようにハッと目を見開いた。
「ユーナ。……脅かすなよ」
「ちゃんとノックしたよ。どうしたの? なにを考えてたの?」
「なんでもないよ! ……ユーナには関係ないこと」
 オミは以前よりもずっと言葉もはっきりしていて、ずいぶん回復しているんだってことが判ったの。顔の包帯も少なくなってるから、あたしは嬉しくて自然に顔がほころんでいた。
「なんだ、元気じゃない。カーヤが気にしてたけど、心配するほどのことはないわね。安心した」
「……なにが? カーヤが何だって?」
「オミが最近よく考え事をしてるって、ちょっと心配してたのよ。オミ、あなたも、身体が辛いのは判るけど、あんまりカーヤに心配かけないように気をつけてあげて。カーヤの方が参っちゃうわ」
 オミはあたしの言葉を、ずいぶん真剣に受け止めてくれたみたいだった。そう、オミだってもう子供じゃないんだもん。いつまでも家族や友達だけに囲まれてた時のような、気ままな態度でなんかいられない。オミもきっとそういうことを学ぶ時期に来ているんだ。
 それ以上言葉をかけるのもなんとなくはばかられて、あたしはそれきりオミの病室を出た。