真・祈りの巫女188
 あたし、本当に疲れてたみたい。立て続けにいろいろなことがあって、ずっと緊張状態だったから。この数日間に、人生の大きなイベントが凝縮されてしまって、いいことも悪いことも次々に襲ってきたんだもん。そのうち、いいことはほんの一握りで、あとはぜんぶ悪いことばかりだった。
 目が覚めたときには既に夕方で、カーヤが台所に立つ音が聞こえてきていたの。あたしはすぐに飛び起きて、部屋のドアを開けた。
「あら、ユーナ。目が覚めたのね。もうすぐ夕食ができるわ」
「ごめんなさいカーヤ! あたし、ずっと留守にしちゃって」
「さっきまでタキがきていて、いろいろ話してくれたのよ。ユーナもお食事しながら聞かせて。今日はここで眠っていけるの?」
 あたしはテーブルに食器を並べるのを手伝って、カーヤが手早く盛り付けしている間にお茶を入れた。オミの食事はもう少しあとになってからみたい。あたし、午後はずっと眠ってたのにお腹だけは空いてて、久しぶりのカーヤの料理に舌鼓を打ったの。
「今はミイがいてくれるから、たぶん大丈夫だと思う。……タキからリョウのことも聞いたの?」
「ええ。タキからも聞いたけど、今は神殿中がその話題で持ちきりだから、自然に耳に入ってきたわ。……ユーナが影を追い払うための祈りを捧げていたら、神様がリョウを生き返らせてくれたんだ、って。リョウが村の救世主になるんだってみんな言ってるわ。でも、ユーナにとってはそれだけじゃないもの。よかったわね、ユーナ。おめでとう」
 そうか、守護の巫女はあたしの祈りを「村のための祈り」として公表して、運命の巫女が見た未来から、リョウを「村の救世主」にしちゃったんだ。それは嘘だったけど、リョウは自分で「俺は影を追い払うために生き返った」って言ってたから、この嘘は本当になっていくのかもしれない。
 嘘をつくのはいけないことだけど、村のためにはこの嘘も必要な嘘なんだ。嘘を貫き通すのは苦しい。でも、これが自分のことを祈ってしまったあたしに対する、本当の罰になるような気がしたの。
「ありがとう。……カーヤには心配をかけて本当にごめんなさい。オミのこともずっと任せきりで」
「タキが時々話してくれてたから、それほど心配してはいなかったわ。オミも少しずつ回復してるのよ。……まだ歩けないけど」