真・祈りの巫女186
 昼食後、再び迎えにきてくれたタキと一緒に長老宿舎へ行くと、名前のついた巫女と主だった神官たちは既に全員集まっていた。どうやらあたしが到着する前に、リョウについてはあらかた説明があったみたい。あたしが部屋に入った時には意見交換ともいえない雑談が行われていて、みんな困惑した表情であたしを見たんだ。
「祈りの巫女、ご苦労さま。……さ、みんな、静かにして。リョウのことは既に決定事項で、さっき話したことがすべてよ。それ以上のことはリョウが動けるようになってから相談しましょう。議題はまだほかにもあるの。 ―― 運命の巫女、お願い」
 守護の巫女がそう言うと、みんなはあたしになにか言いたそうな表情を残しながらも、運命の巫女に視線を移した。
「このところ毎日定期的に未来を見ていたのだけど、結果があまりはかばかしくなかったのは前にも話した通りよ。でも、昨日の夜あたりからまた新たな情景が見えるようになってきたわ。今日は午前中に2回、神殿に入って、その間に見える未来がかなり変化したの。……おそらく、守護の巫女と神託の巫女がリョウに会って、彼の処遇を決めたことが、未来を決定付けたのだと思うわ」
 あたしも、ほかのみんなも、その運命の巫女の言葉には驚きを隠せなかった。あたしがリョウを生き返らせたこと。それが村の未来を決定付ける重要な要因になってたんだって気づいたから。こんなにはっきりそれが証明されたのは初めてだったんだ。
 運命の巫女は少しだけ言いづらそうに間を置いてから言った。
「次に影が襲ってくるのは3日後の夜、それが通算4回目で、5回目は翌日の夕方、6回目は更に翌日のお昼頃になるわ。……今私に見えているのはそこまでよ。そして、私が見た風景の中に、リョウが影と戦う姿が見えるのよ」
 運命の巫女がそう言った瞬間、あたしはまた突然あの発作に襲われたの。
 胸がドキドキいって苦しくなって、目の前が真っ暗になった。そのあと運命の巫女がしゃべったことなんかもう耳に入らない。ざわざわと訳の判らない騒音があたりを覆っていて、あたし独りだけ恐怖の真ん中に放り出されたみたいだった。今度は発作がおさまるまでずいぶん長い時間が経った気がする。気がついたとき、あたしは胸を抑えて、テーブルに突っ伏す寸前のような格好をしていたの。
 その時、会議の席は再びざわめいていて、あたしの様子に気づいた人はいなかったみたい。あたしは必死で自分の中の恐怖を退けて、周囲の声に耳を傾けようとした。