真・祈りの巫女185
 あたしの急激な変化で、リョウもかなり戸惑ったみたいだった。でもあたしの方はそんなことを気にする余裕はなくて、リョウの腕にしがみついたまま、必死で自分を落ち着けようとしていたの。
 やがて、沈黙の時間が過ぎて、少しだけ落ち着いてきた頃、リョウが小さく言った。
「……痛い」
 それが、あたしが腕を掴んでるからなんだって気がつくのに、それほどの時間はかからなかった。
「あ……ごめんなさいリョウ! あたし、リョウは怪我してるのに……」
 あたしがそう言ってようやく手を離すと、リョウは腕を抱えるようにしていたわった。
「嘘だ。痛くはない。俺は人一倍丈夫にできてるらしいからな。ちょっと言ってみただけだ」
 まるで、あたしに手を離してもらうためにそう言ったみたいな言い方だった。そのままリョウは再び横たわって視線を外してしまったから、もしかしたらリョウは本当に痛かったのかもしれないと思ったの。あたしが気にしないように、痛くないふりをしてくれたのかもしれない、って。そういうリョウのちょっとした思い遣りって、あたしは気づくことが少なかったけど、知らないところですごくたくさんもらってたんだ。
 そのとき、遠慮がちにドアが叩かれる音がして、あたしが返事をするとミイが顔を出した。
「お話し中ごめんなさいね。お食事ができたんだけど、運んできてもいい?」
「あたしの方こそごめんなさい、お手伝いもしないで」
 せめてもの罪滅ぼしと思ってリョウの食事を運ぶ手伝いをして、そのあと再びリョウが身体を起こして食事を始めたの。あたしはなにもすることがなくてうしろで見守ってたんだけど、やがてあらかた食事が片付いたところでリョウが言ったんだ。
「ミイ、できるだけ早くランドに会いたい。ここにつれてくることはできるか?」
「ええ、もちろんよ。ランドも喜ぶと思うわ。……たぶん、わざわざ呼ばなくても、今夜仕事が終わったら勝手にくるわね、ランドなら」
 あたしはリョウの言葉にも驚いたのだけど、リョウがこんなに早くミイに馴染んでしまっていることに、少しの嫉妬を感じていた。