真・祈りの巫女184
 台所の様子を気にしつつ、それでも辛抱強くリョウを見守っていると、やがてリョウが口を開いたの。
「 ―― だいたい判った。……この現象のすべてじゃないが、少なくとも俺が生き返った理由については判ったと思う」
 あたし、とっさに言葉を返すことができなかった。今の話だけでリョウにはなにが判ったの? それより……リョウはいったいなにを知っているの……?
 このとき、あたしの中に初めて疑いの気持ちが生まれたのかもしれない。すごく漠然としていて、なにがどう違うとはっきり指摘できるほどじゃなかったけど、なんとなく、この人は今までのリョウとは違うかもしれない、って。
「生き返った理由、って? ……どう判ったの?」
「俺が、影をこの村から追い出すために生き返った、ってことだ」
 リョウがそう言った瞬間、あたしの心は恐怖に凍りついた。
 いきなり心臓が動きを早めて、呼吸が止まった。身体全体に震えがきて、目の前のリョウの顔すらうまく見ることができないくらい。頭の中が混乱してもうなにも考えられなかった。心臓の高まりは一瞬で、震えもすぐに去ってくれたけど、その恐怖の感覚だけはいつまでも残ったままだったの。
「どうした?」
 リョウの声。あたしが1番慕わしく思ってたリョウの声すら、今のあたしには恐怖の対象だったの。……あたしの身体に変化をもたらしたのが、リョウのその言葉だって、あたしには判った。あたし、リョウに影と戦って欲しくない。リョウのそんな言葉聞きたくない。もう2度とリョウを失いたくなんてない!
「大丈夫か? 身体の具合が悪いんじゃないのか?」
「……リョウ、お願い、そんなこと言わないで」
 少し身体を起こして、心配そうにリョウが伸ばした腕に、あたしはしがみついた。
「リョウは影と戦うために生き返ったんじゃないの。だからそんなこと言わないで! お願いだから影に近づかないで!」