真・祈りの巫女183
「さっきのこと、もう少し詳しく聞かせてくれないか? 俺の予言で以前と同じ宿命が出たって」
「……ごめんなさい。さっきも言ったように、予言の内容を詳しく話すことはできないの。でも、リョウが本人なのは間違いないわ。記憶がなくてもそれを確かめることができたから、リョウは村の一員として認められたの。もう、リョウがどこへ行くのも自由だし、村の決まりを守りさえすれば、行動を制限されることもない。……もし、リョウが希望するなら、この村を出て行くのも自由よ」
 あたし、リョウにこのことを告げるのは、ほんとはもっと時間が経ってからにしたかった。でも、言いたくないと思っているからこそ、思わず口にしてしまったの。自分でも不思議だった。
「そうか。……それじゃ、俺は一生この村にいることもできるんだ」
「ええ、もちろんよ! だって、リョウはこの村で生まれて、この村で育ったんだもん!」
 リョウの返事が嬉しくてあたし、思わず力をこめてそう言っちゃったの。そうしたら、リョウはふっと、視線をあたしに戻した。
「ここにいる人間は、みんな正直だな。おまえも、ミイも、タキや守護の巫女や神託の巫女も。……さっきミイに少し聞いた。この村は今影に襲撃されてて、俺はそのために死んだんだ、って。そのあたりの経緯を、俺に詳しく話してくれないか?」
 リョウに請われて、あたしは少しためらいながらも、今までのことを詳しく話し始めたの。
 運命の巫女の漠然とした予言から始まって、あくる日の明け方に突然の影の襲撃でマイラたちが死んだこと。その日の真夜中の襲撃では影の数が増えて、あたしの両親ほか大勢の人が死んだ。翌日の襲撃では、村人は神殿へ避難していたから多くの人たちは救われたけど、影と戦っていた狩人のリョウだけが死んでしまったこと。あたしは絶望のあまり神様に祈りを捧げて、その祈りが通じて、リョウが生き返ったんだってこと。
 リョウはすごく熱心に聞いていて、話しているうちにあたしの中からためらう気持ちが消えていった。影があたしを狙ってきたことも、リョウが生き返ったあとの騒動のことも、ほとんどすべてを話すことができたの。だからずいぶん時間もかかってしまって、話し終わって気がついたときには、台所からミイが食事を作る音が聞こえていたんだ。
 あたしの話を聞き終えたリョウは、頭の中を整理するように、しばらくの間沈黙していた。