真・祈りの巫女182
 ミイへの返事に困ってタキを振り仰ぐと、タキもちょっとだけ考えて言った。
「そうだな、午後からの会議で主要の巫女と神官たちには伝えられるから、夕方には神殿の全員が知ることになるだろうし、早ければ今夜にも村に噂が出るかもしれないな。ミイ、その人に話すのは夕方まで待ってくれるかい?」
 タキも、ミイが言うその人がリョウの身内だって、察したみたいだった。具体的なことを聞いて、ミイ自身もずいぶんほっとしたみたい。たぶんミイって、秘密を持っているのが辛くてしかたがない人なんだ。もちろん黙っていなければならないことをうかつに人にしゃべったりはしないから、そのへんはすごく信頼できる人なんだけど。
 ミイは、替えた包帯とお湯を張った桶を持ち上げながら言った。
「判ったわ。それじゃ、夕方までにぜんぶお仕事を片付けなきゃいけないわね。ユーナ、いつ神殿に戻るの?」
「午後に会議があるから、お昼まではいられるわ。食事の支度も手伝えるわよ」
「それじゃ、それまではリョウのことをお願いね。お洗濯してきちゃうから」
「あ、オレもいったん神殿に戻るよ。会議の前にはまた迎えにくるから」
 ミイが出て行きかけたそのとき、タキもそう言って、2人連れ立って寝室を出て行ってしまったの。そのうしろ姿を見送ったあたしは、必然的にリョウと2人きりになってしまったことに気づくこととなった。……もしかして、タキもミイも、あたしに気を遣ってくれようとしたのかな。どちらかというと逃げ出したような気もするんだけど。
 さっきのことがあったから、あたしも逃げ出したかったけど、でも勇気を出してリョウを振り返ったの。もちろんリョウは逃げることなんかできなかったから、少し恥ずかしそうにあたしを見上げていた。
「……さっきは悪かったな。変なところを見せて」
 リョウがそう言ってくれて、あたしはずいぶん気が楽になった。枕もとの椅子に腰掛けながら答えたの。
「ううん、あたしが早とちりして勝手にドアを開けちゃったんだもん。リョウが悪いんじゃないわ」
 リョウもいくぶん気が楽になったようで、大きく息をつきながら視線を外した。