真・祈りの巫女181
 しばらくドアに背を向けてなんとかドキドキを治めようとして、やっと台所に行って水を飲んで少し落ち着いた頃、寝室のドアを開けてタキが顔を見せた。
「待たせたね、祈りの巫女。もう入って大丈夫だよ」
 必死で笑いをこらえようとしてるらしいタキの表情を見て、あたしは少しだけムッとして、無言でリョウの部屋へと入っていった。リョウと目を合わせるのがちょっと恥ずかしかったのだけど、それでもなんとか気力を振り絞ってリョウを見ると、リョウの方もちょっとばつが悪そうな感じだったの。2人の間になんとも言えない、気恥ずかしいような沈黙が漂った。そんなあたしたちの雰囲気を察して、助け舟を出すように、タキが言った。
「リョウの傷はずいぶんいいよ。この分なら明日からは動いて大丈夫そうだね」
「本当?」
「ああ。もともと鍛えていて体力はあるし、なにしろ若くて健康だし、普通よりもずっと治りが早いよ。オレもこんなに回復の早い人間は初めて見た。もちろん、まだ無理は禁物だけどね」
 あたしはようやく笑顔が出てきて、そのままリョウに向き直った。
「よかったね、リョウ。明日からは自由に動けるわ」
「俺は自由に動いていいのか?」
 リョウが言ったその言葉が神託の巫女の予言を指していることに、あたしはすぐに気づいた。
「ええ。身体が治りさえすれば、どこへ行くのも自由よ。さっき、神託の巫女の予言で以前のリョウと同じ宿命が出てきたから、守護の巫女があなたをリョウ本人だと認めたの。予言の内容について詳しく話すことはできないのだけど」
 リョウは少し驚いたように目を見開いたけど、それについて何かを言うことはなかった。その時声を出したのはミイだった。
「リョウ、よかったわ。……ユーナ、このことをいち早く伝えてあげたい人がいるんだけど、いつ話せばいいかしら?」
 ミイも今回は多少気を遣ってそう言ったのだけど、あたしにはそれがリョウの両親のことだって、すぐに判ったの。