真・祈りの巫女175
 あたしは、正直言って魂の形や色と言われてもピンとこなくて、だから2人の会話に口を挟むことができなくて、ハラハラしながら見守っていただけだった。でも、タキは違ったみたい。タキはたぶん神託の巫女の物語もいくつか読んでいて、あたしよりもずっとはっきりイメージすることができたんだ。
「ちょっと待ってくれ。……神託の巫女、あなたも含めて、過去の神託の巫女は1度死んだ人間の魂を見たことなんてなかったんだろう? だったら、その経験したことがない魂の色というのも、リョウが1度死んだことで変化した部分じゃないのか?」
 タキの言葉で、神託の巫女も気づいて考え込んだようだった。
「そう、ね。確かにその可能性もあるわ。私は死んだ魂がどうなるかなんて知らないもの」
「リョウが右の騎士なのは間違いないんだろう? だったら、右の騎士がほかにいない以上、彼がリョウ本人だと考える方が自然だよ。だって、間違いなく右の騎士なんだろ? 例えばだけど、左の騎士だって可能性はないんだろ?」
「ええ、左の騎士ではないわ。右の騎士と左の騎士とでは魂に現われる色がまったく違うの。この2つを間違えることはありえないわ」
「それならなんの問題もないよ。1度死んだことで記憶を失って、魂も多少変わったけど、彼はリョウ本人なんだ。死ぬ前と同じ右の騎士の宿命を持っていることがその証明になる。守護の巫女、リョウを認めるのにそれ以上の証拠が必要なのか?」
 理論的な話を始めるとタキはすごく生き生きとしていて、この間もそうだったけど、たとえ相手が守護の巫女だろうとぜったいに言い負けたりしない。あたしが思った通り、守護の巫女は少しだけ迷って、でもきっぱりと言ったの。
「ええ、タキの言う通りよ。リョウを認めるための証拠は揃ったわ。……これ以上は私の出る幕じゃないわね。祈りの巫女、神託の巫女、午後から会議を開いて、ほかの巫女と主要な神官たちにリョウのことを報告することにするわ。タキ、あなたも出席して」
「ああ、判った」
「神託の巫女」
 守護の巫女が神託の巫女を促すと、神託の巫女は笑顔で首を振った。
「私はもう少し祈りの巫女と話があるの。よかったら先に帰っていて。忙しいのでしょう?」