真・祈りの巫女173
 神託の巫女が言葉を切ったあと、リョウは右手を神託の巫女に差し出した。
「話はだいたい判った。要するに、俺の魂の形を見て、俺が生まれたときに受けた誕生の予言と比べるってことだな。痛みも違和感もないし、無差別に頭の中を引っ掻き回す訳でもないらしい。それなら構わないからさっさとやってくれ」
 リョウのその態度には、神託の巫女の方が少し戸惑ってしまったようだった。ちょっと投げやりにも見えて、あたしはリョウが疲れてしまったのかと思って、少し心配になったの。だって、リョウはまだ身体の怪我が治ってないんだもん。そうして上半身を起こしているのだって、リョウの身体に負担をかけてるのかもしれないんだ。
「……判ったわ。それじゃ、少しのあいだ手に触れているから楽にしていて」
 そう言って、神託の巫女はリョウが差し出した右手を取った。
 神託の巫女は両手でリョウの右手を包み込んで、静かに目を閉じた。ほんの少し、まるで静電気を浴びた時のようにリョウが目を細めたけど、それもほんの一瞬のことであとはじっと神託の巫女の顔を見つめていたの。逆に、神託の巫女にはほとんど表情と呼べるものは現われなかった。いったいリョウから何を読み取ってるのかな。あたしは気になって、たぶんまわりのみんなも同じ気持ちだったんだろう。神託の巫女の集中を妨げないように誰もが無言で、呼吸をする音すら聞こえてこなかった。
 その沈黙の時間はかなり長いあいだ続いた。やっと、神託の巫女が大きく息をついて目を開けたとき、周りにいたみんなもいっせいに溜息をついたの。それになんだか笑いを誘われて、場の緊張が一気に解けていった。神託の巫女も笑顔を浮かべていた。
「協力してくれてありがとう、リョウ。おかげでいろいろ判ったわ」
「なにが判ったんだ?」
「ごめんなさい。今すぐには教えてあげられないの。これから守護の巫女や祈りの巫女と相談して、あとで祈りの巫女を通じて、すべてとは言わないけれど多少のことは聞かせてあげられると思うわ。少し別の場所で相談してきてもいいかしら」
「ああ、好きにしてくれ。……出て行くついでにミイを呼んでくれないか?」
 神託の巫女は請け合って、寝室を出てミイに声をかけたあと、あたしたちを玄関の外まで連れ出してしまったの。