真・祈りの巫女171
 再びあたしはリョウの部屋へと戻ってくる。うしろからは守護の巫女、神託の巫女、タキと続いていて、リョウは順番に見ながら少しだけタキに視線を止めた。リョウの寝室はそれほど狭くはないのだけど、5人も入ると少し圧迫感があるみたい。まずはあたしがリョウに近づいて、2人を紹介したの。
「リョウ、さっき話した守護の巫女と、神託の巫女よ。タキのことは知ってるわよね」
「……守りの長老は来ないのか?」
「ええ。高齢だから最近はあまり出歩かないの。守りの長老に会いたいのなら、リョウの身体が治ってから会いに行けばいいわ」
「祈りの巫女」
 うしろから守護の巫女に声をかけられて、あたしは場所を譲った。
「こんにちわ、リョウ。あなたに再び会えて嬉しいわ。先日3回目の影の来襲で、あなたは影の命と引き換えに自分の命をなくしてしまった。もしもあなたに再び会えることがあれば、私は真っ先にお礼を言いたかったの。……リョウ、本当にありがとう。あなたの犠牲がなかったら、村はもっとずっと大きな被害を受けていたかもしれないわ」
 リョウはすぐには答えずに、いくぶん警戒しながら守護の巫女を見つめていた。守護の巫女も笑顔でそう言ったあとは何も言わなかったから、しばらくの間のあと、根負けしたようにリョウが答えたの。
「残念だが、俺にはこの村の記憶は一切ない。1度死んだって話も今朝聞いたばかりなんだ。今の俺にそんなことを言われても困る」
「そうだったわね。ごめんなさい、あなたを試すようなことを言って。もう祈りの巫女に聞いていると思うけど、祈りの巫女の婚約者で、狩人のリョウは1度死んだわ。それも、本人を目の前にして言うのはなんだけど、身体がバラバラになるような大怪我を負って、何かの拍子に息を吹き返すなんてことがありえないくらい完璧な死に方だった。だから今、目の前にあなたがいるのに、私には信じることができないのよ。それは判ってもらえるかしら」
「ああ。俺があんたの立場だったとしても信じないだろう。疑って当然だ」
「判ってくれて嬉しいわ。……あとのことは神託の巫女に聞いてちょうだい。あなたの質問にもすべて答えてくれるわ」