真・祈りの巫女170
「言葉の意味がよく判らない。おまえは祈りの巫女なんだろ? 守護の巫女と神託の巫女ってのは何だ? この村の責任者か?」
 そうか。リョウはそんなことも忘れてるんだ。あたしはできるだけリョウが判りやすいように説明しようと思った。
「村のことはね、神殿にいる巫女と神官が司っているの。神官の最高位が守りの長老で、巫女で同じ位置にいるのが守護の巫女。この2人が村のことをいろいろ考えて、村をいい方向へと導いているわ。あたしは村の平和を神様に祈るためにいる祈りの巫女で、神託の巫女というのは、村に新しい子供が生まれたときに誕生の予言をする巫女なの。子供に触れて、その子が持っているさまざまな運命や宿命を予言するわ。ほかに聖櫃の巫女と運命の巫女がいて、聖櫃の巫女が村の神事を取り仕切って、運命の巫女は村全体の未来を見るの」
「その、神託の巫女っていうのが、俺の誕生の予言をしたいんだな?」
「そうなの。……記憶を失う前にリョウが持っていた宿命と同じものを、今のリョウが持っていることを確かめたいの。そうすればリョウが本物だってことが判るから」
 リョウは少しの間考えているように見えた。でも、それもほんの少しだけで、再び顔を上げてあたしに言ったの。
「触れるだけなら構わない。……どうやらその儀式がなければ、俺はこの村で生かしてもらえないようだからな」
「そんなこと! もしも守護の巫女がリョウになにかしたらあたしがリョウを守るわ!」
「おまえの細腕には期待してない。自分のことは自分で守るさ。……連れてこいよ、守護の巫女と神託の巫女を」
 そう言ったリョウはすごくそっけなくて、さっきちょっとだけ以前のリョウを感じて喜んだ分また涙が出そうだったけど、でもリョウが許してくれたからあたしは2人を連れに部屋を出たの。
 食卓まで行くと、外にいたはずの3人がミイのお茶を飲んでいるところだった。あたしは驚いて立ち止まってしまって、それに気づいたミイが声をかけてくれた。
「ユーナ、お連れがいるのなら先に言ってくれればよかったのに。今あなたにもお茶を持っていくところだったのよ」
「話が終わったのね、祈りの巫女。それで、リョウと話はついたの?」
 あたしがなにか言うよりも早く守護の巫女が言ったから、あたしはうなずくことで答えた。