真・祈りの巫女161
「 ―― 安心してリョウ。あなたのことは必ず守る。そう、約束するから」
 話している間、リョウはほとんど表情を変えなかったから、あたしはリョウがあたしの話をどう受け取ったのか推察することができなかった。話し終わっても、リョウは安心した表情は見せなかった。あたしの言葉を信じられないでいるのかもしれない。
「話はだいたい判った。……食事をもらえるか?」
 リョウの口調はそれまでと変わらなかったのに、リョウのその言葉で重苦しい空気が一気に吹き飛んでいた。
 食事の介助はミイに任せて、あたしはうしろでずっと2人の様子を見守っていた。リョウは昨日よりも遥かによくなっていて、身体を起こすのを手伝ったりお皿を取ってあげたりするほかは、ぜんぶ1人でできるようになっていた。今朝から普通の食事に戻したのに、食べるのもすごく早かったの。この分ならタキの予想よりもずっと早く立って歩けるようになりそうだった。
 食後、あたしは気になっていたことをリョウに尋ねた。
「リョウ、さっき、ミイを見て何かを思い出したの? ミイのことを覚えているの?」
「いや。……ただ、似てる人を知ってたような気がした。それだけだ」
 リョウは話したくないように目をそらしたから、あたしもそれ以上は訊くことができなかった。
 あたしとミイはそれきりリョウの寝室を出て、今度は2人だけで自分たちの食事を摂ったの。リョウの看護についてタキに言われていたことをミイにも伝えて、それが終わると自然に雑談になった。このところあたしはまったく外に出ていなかったから、村の様子についてミイはいろいろ話してくれたんだ。災厄がまだ去っていないから、村の復興はぜんぜん進んでいなかったけど、その代わりに西の森の出口あたりに大きな堀を作る作業を進めているんだって教えてくれた。
 ミイは、リョウの両親のことを気にしていた。リョウの両親はリョウが生きていることを知らないから、今でもリョウが死んだ悲しみに暮れている。ミイはずっとその様子を見てきたから、せめてこっそりとでも会わせてあげたいんだ。それに、両親を見れば、リョウの記憶も戻るかもしれないって。ミイの気持ちはよく判ったけど、神殿でのリョウの立場が決まるまでは誰にも話すことはできなかった。
 食後タキが迎えに来るのを待ちながら、あたしは理由の判らない不安感と戦っていた。