真・祈りの巫女159
「リョウ、紹介するわ。ミイよ。リョウがまだ子供の頃、両親と一緒に住んでいた家の近くに引っ越してきたの。ランドと夫婦で、あたしたち2人ともずいぶんお世話になったのよ」
 結婚してからずっとミイたち夫婦には子供ができなかったから、子供好きのミイは近所の子供たちにすごく親切にしてくれたんだ。ミイの家の前を通るとときどきいい匂いがして、窓から中を覗くと、笑顔でおやつに招待してくれるの。ランドとミイの夫婦は、リョウにとっては2つ目の家族みたいだった。だから、あたしのことを忘れているリョウでも、ミイのことは覚えているのかもしれない。
「リョウの身体がよくなるまでの間、ミイがリョウの世話をしてくれることになったの。もちろんあたしも頻繁に覗きにくるわ。でも、あたしには仕事があるから、今までのようにずっと一緒にはいられないから」
 あたしがなんとなくリョウに申し訳なくて、それきり口ごもってしまうと、その先をミイが引き継いでくれた。
「あたしではユーナの代わりにはならないかしらね。でも、リョウは忘れてしまっているかもしれないけど、記憶を失う前のリョウは、ユーナが祈りの巫女になったことをとても喜んでたのよ。だからあたしで我慢してちょうだいね。……本当によかった。あたし、リョウが死んだって聞かされてから、まるで自分の弟が死んだような気がして、とても悲しかったの。だからランドにリョウが生き返ったって聞いたときにはすごく嬉しかった。たとえ記憶がなくても、リョウが生き返ってくれて本当によかった ―― 」
 ミイの話を聞きながら、リョウは驚いて表情をかたくした。
「……死んだ……? 俺は1度死んだのか!」
 リョウがそう言ったとき、ミイも自分が口を滑らせてしまったことに気がついて、顔を白くしてあたしを振り返ったの。あたし自身もリョウがそう言うまでは気づいてなかった。今まであたしは1度もリョウにその話をしていなかったし、記憶のないリョウが自分の死を伝えられることがどれほどの衝撃かなんて、まるで考えもしてなかったんだ。
「ユーナ、ごめんなさい。あたし……」
「大丈夫よミイ。心配しないで。……リョウ、あなたが1度死んだのは本当よ。狩人のあなたは村を守って、村を襲ってきた影に殺されてしまったの。でも……リョウは戻ってきてくれた。怪我をしていて、記憶もないけど、でもあたしのところに戻ってきてくれたの」