真・祈りの巫女158
 翌朝、リョウがまだ眠ってることを確認して、昨日タキが置いていってくれた材料で自分とリョウの朝食を作っていたとき、家の扉がノックされた。手を休めて扉を開けると、そこにはランドの奥さんのミイが、両手にたくさんの荷物を持って立っていたの。
「ミイ、よく来てくれたわ。さ、荷物をちょうだい」
「おはようユーナ。……あら、もう朝食の支度が始まっちゃってるのね。一緒に食べようと思って材料持ってきたのよ」
「ありがとう。こんなに遠くまで、重かったでしょう?」
「ううん。すぐそこまではランドが一緒だったからそうでもないわ。……ランドったらね、ここで一緒に食べようって言ったのに、あたしと一緒に食事をするのが嫌だって言うのよ。あたしのお料理そんなにおいしくないのかしら」
 ミイのノロケ話はいつもとまったく変わりがなくて、ほっとしたあたしは自然に顔がほころんでいた。と同時に、ランドに申し訳ない気持ちにもなってたの。たぶんランドはすごくミイのことが心配で、でもあんまりあからさまに心配するとあたしが気にすると思って、ここに顔を出すことができなかったんだ。ランドはミイにもすべては打ち明けてないはずだから、ミイにはランドがどうして心配するのかも、それどころか自分を心配していることさえ、何も判らないのだろう。
 ミイは、両親を失ったあたしを心配して、できるだけ明るく振舞っているみたいだった。ミイのおかげでずいぶん豊かになった朝食を作り終えたあと、リョウの寝室を覗いてみる。リョウは既に目覚めてたから、あたしは笑顔のまま部屋に入っていったの。
「リョウ、おはよう。身体の具合はどう? お薬ちゃんと飲んだ?」
「……よく効く薬だな。ほとんど痛みを感じない」
「代々の神官たちがずっと研究してきた成果だもの。この薬が欲しくて村にくる人たちも多いんだって聞いたわ。でも、あんまり長く続けると逆によくないんだって。……朝食が出来たのだけど、ここに運んできてもいい?」
 リョウがうなずいたのを確認して、あたしは再び台所に戻った。今度はミイもつれて寝室に入る。ミイの姿を見て、リョウはまた少し驚いたように目を見開いたの。その様子はまるで、ミイのことを思い出したようにも見えたんだ。
 ミイの方もリョウを見て驚いたようだったけれど、それを表情に表すことはほとんどしなかった。