真・祈りの巫女144
 食後、タキは薬の調合をして、リョウの目が覚めたら飲ませるようにとあたしに託した。
「目が覚めるまで待ってていいの? その前に薬が切れるかもしれないわ」
「薬が切れたら痛くて到底眠ってなんかいられないよ。眠ってる人間に薬を飲ませるのって、すごい重労働なんだ。だから目が覚めてからの方がいい」
「そんな……。リョウがかわいそうよ!」
「祈りの巫女がそう言うなら挑戦してみてもいいけど、たぶん薬が無駄になるだけだよ。それに……早く目を覚まして欲しいんだろ?」
 あたしが反論できなくなると、タキはちょっと意地悪そうに笑って神殿へ帰っていった。……タキって、リョウになにか恨みでもあるのかな。リョウはタキのことをあまりよく思ってないけど、タキの方もリョウのことをそれほど好きじゃないのかもしれない。
 タキが帰ってしまってからは1人でリョウの様子を見守りながら、あたしは家の埃を掃除したり、リョウの着替えを用意したりしていたの。そうして、そろそろ日が沈みかけてきた頃、薬が切れてリョウが苦しみ始めたんだ。
「リョウ、リョウ」
 あたしはそうリョウに声をかけながら、額ににじんだ汗をぬぐいつづけた。薬が切れたせいだって判ってたから、早く飲ませてあげたかったけど、でもタキは飲ませ方を教えてくれなかったんだもん。とにかく目を覚まして欲しくて、あたしはずっと声をかけ続けていた。
「リョウ、リョウ! お願い、目を覚まして!」
 その時、ようやくリョウが薄く目を開けたの。あたしは嬉しくて、まだ視線をさまよわせているリョウに言ったんだ。
「リョウ! 目が覚めたのね、リョウ!」
 声に反応して、リョウはあたしを見た。でも焦点は定まってないみたいで、ゆっくりとあたりを見回していった。
「……ここは……」
 リョウの声はかすれていてほとんど声になっていなかった。それでもあたしは嬉しかったから、喜びで自然に顔が緩んでいた。
「ここ? ここはリョウの家だよ。リョウが自分で建てた森の家に戻ってきたんだよ」