真・祈りの巫女143
 昨日の朝以来何も口にしてなかったあたしは、しばらくの間はただ食べることに熱中していた。あたしはタキと食事をしたことってほとんどなくて、リョウとはたまに一緒に食べることもあったのだけど、一緒に食べ始めてもたいていはリョウの方が早く食べ終わってあたしを待っていたの。でも、今日は本当にお腹がすいてたみたい。一気に食べ終えて向かいを見ると、タキの前にはまだおかずが残っていたんだ。
「早かったね。お腹すいてたの?」
「そうみたい。昨日の夜は食事どころじゃなかったし、今朝も遅かったから、考えてみると3食も抜いちゃってたんだわ」
「身体に悪いよそれは。……オレ、今日は夕食当番だから夕方には帰らなくちゃいけないんだけど、自分で作って食べれる?」
「大丈夫よ! 今はカーヤに任せちゃってるけど、共同宿舎にいた頃は当番だってやってたもの。これからはちゃんとリョウの食事も作るわ!」
 ちょっとムキになってそう言うと、タキは微笑ましそうに笑った。でもその表情の中にほんの少しだけ切なさのようなものを感じて、あたしは戸惑ってしまったの。……そうか、タキだってリョウのことではいろいろ思うことがあるんだ。タキはランドよりもずっと神殿のことを知っていて、だからそのぶん心配事だって多いはずだから。
「まあね。祈りの巫女に任せておけば安心だとは思うけど。君もいつまでもここにいられる訳じゃないから、明日からのことはまた相談しないといけないね。ランドにも自分の生活があるし」
「……やっぱり、神殿へ帰らなければダメ?」
「リョウのことはいつまでも隠し通せないよ。リョウの目が覚めなければ今の段階ではなんとも言えないけど、彼が死ぬ前とまったく同じリョウなら、君の祈りのことを守護の巫女に説明しない訳にはいかない。そうなると、今後の君の行動はすごく重要な意味を持ってくるんだ。守護の巫女を説得することも必要だし、村の祈りを今まで以上に行う必要も出てくる」
 タキの言うことは間違ってなかった。あたしがみんなを必死になって説得しなければ、自分の命もリョウの命も危うくなる。それにはみんなのためによりたくさんの時間を祈りに捧げることも必要になってくるんだ。