真・祈りの巫女141
 リョウがなんであろうと運命をともにすると誓ったその夜、リョウの寝室のゆかの上に座って、ランドに勧められるままお酒を飲んだあたしは、いつの間にかつぶされてしまっていた。目が覚めたときには既に昼近くで、リョウの寝室の隣にある部屋でベッドに横になっていたの。お酒の名残の頭痛が少しだけ残っていて、のどの渇きを覚えて台所へ行くと、そこにはタキがいたんだ。
「おはよう、祈りの巫女。よく眠ってたね」
 あたしはうまく声が出せなくて、タキに水を1杯もらって飲み干したあと、やっと少しだけ落ち着いて言った。
「おはようタキ。……ランドは?」
「夜が明ける前に村へ帰ったよ。このところ災厄騒ぎでまともに仕事してなかったから、少しでもその分を取り戻すんだって張り切ってた。今年は田畑の収穫も多く見込めないからね、食糧難も深刻なんだ。危険を察知した動物たちも今は村の近くにはいないし」
 タキの話を聞いて、あたしは影が村に与えた影響の大きさを初めて知ったの。影は村の人を殺したり、家を壊しただけじゃないんだ。田畑を蹂躙して、付近から食料になる動物を追い払って、村に長期的な打撃を与えていった。運命の巫女はあと数日影が現われないって言ったけど、この数日はけっして休息の時間じゃないんだ。
「神殿はどう? カーヤは心配していた?」
「そりゃあ、心配してない訳はないよ。君も1度顔を出しておいた方がいいと思うけどね。だいたい昨日から食事もしてないだろう」
「ううん、まだ帰れないわ。リョウの目が覚めるまでは」
 そう言い置いて、あたしは思い出したようにリョウの部屋に向かった。ベッドの上のリョウは昨日と同じ姿で眠っていて、たぶんタキが調合した薬が効いているのだろう、痛みもほとんど感じていないみたいだった。
「ひとまず熱の方は下がったよ。早ければ今日にも意識が戻ると思うけど、意外に長引くかもしれない。祈りの巫女、本当に1度宿舎へ戻らないか? オレもそんなに長い間ごまかせないし、いつまでも顔を見せないでいると変に勘ぐられることもある」
「……もう少しだけ待って。せめてあと1日。リョウの目が覚めるまで傍にいたいの」
 タキの言うことはすごくよく判った。でも、あたしは自分がしたことの結末を、この目でちゃんと見届けたかったんだ。