真・祈りの巫女136
 リョウの服と、持ち物。
 あの時、ただでさえ神殿の中は真っ暗で、しかもリョウは身体にたくさんの怪我をしていて、着ていた服はボロボロだった。だからリョウがどんな服を着てたかなんて、あたしは覚えてない。覚えてなかったけど ――
 なんだかすごく嫌な予感がした。あたしは考えちゃいけない。……ランドはすごく正直で公平な人だ。あたしがなにを恐れているのか、ちゃんと判ってくれている。
「ランド、お願い、あなたが保管していて。誰の目にも触れないところへ」
「処分するんじゃないのか? 保管しておいていいのか?」
「判らない。判らないけど、それはあたしの自由にしちゃいけないような気がするの。せめて、リョウの目が覚めるまでは、そのままにしておいて。……ランドには迷惑かもしれないけど」
「……判った。オレが自宅に隠しておく。ミイには中身については内緒にしておくが、おまえかリョウのどちらかが取りに来た時にはすぐに渡せるように話しておく。……それでいいか?」
「ええ、ありがとう」
 少しの間、2人に沈黙が流れていた。その時に家の中で気配がして、タキの足音が近づいてきたの。タキは扉を開けて、あたしを見ると少し複雑な表情で微笑んだ。それだけでタキが、ランドと同じようにリョウについて疑っているらしいことは感じられたから、あたしも曖昧に微笑み返すことで答えた。
「祈りの巫女、ランドに聞いたと思うけど、リョウは命には別状ないから安心するといいよ。オレはこれから戻って薬を調合してくる。君も宿舎に戻るなら一緒に行こう」
「ううん、あたしはリョウの傍についてるわ。カーヤにはタキがうまく言っておいて」
「そう言うと思った。判ったよ。カーヤにはなんとかごまかしておく。少し熱が出るかもしれないから、額を冷やしてあげてくれる?」
 あたしがうなずくと、タキは神殿へ戻っていった。そのうしろ姿を見送ったあと、あたしとランドは再び家の中に入ったの。