真・祈りの巫女134
 タキが持ってきていたランプをかざして、あたしは担架を持った2人をリョウの家まで先導した。リョウはずっと意識を失ったままで、ベッドに寝かせたときに多少のうめき声は上げたものの、目を覚ますことはなかった。家の中を灯りで満たしたあと、あたしはランドとタキに家を追い出されたの。リョウはほとんど全身に渡って怪我をしていて、治療のためには服をぜんぶ脱がさなければならなかったから、独身の女の子が見るものじゃないっていうのがその理由だった。
 ランドは狩人だから、怪我の応急処置には慣れていた。タキも神官だったから、ローグほど本格的じゃなくても怪我や病気の治療には精通している。だから2人に任せておけば安心だったのだけど、家の扉の前で待っているあいだ、あたしはものすごく不安だった。だって、あたしは1度リョウが死んだときの絶望を味わったんだもん。リョウが生き返ってすごく嬉しかったのに、もしもまたリョウが死んでしまったら、その時自分がどうなるのか判らなかったから。
 もう2度と、あんな想いはたくさんだよ。もしも今度リョウが死んじゃったらあたしも一緒に死のう。誰に止められたって、誰が悲しんだって、あたしはリョウと一緒にいるんだ。だって、リョウがいないあの時のあたしは、もう祈りの巫女じゃなかったんだから。
 ううん、禁忌を破った時点で、今でもあたしは祈りの巫女じゃなくなってるのかもしれない。殺されるのか、追放されるのか、神殿が与える罰がどんなものかは判らないけど、あたしはリョウを生き返らせたことを後悔はしないよ。たとえ村を追い出されることになったって、リョウと一緒ならその方がずっと幸せだと思うから。
 リョウ、お願い、助かって。神様、もしもあたしにまだ祈りの巫女の力があるなら、リョウの命を助けて。
 そうして、あたしが心の中で祈りを捧げていたその時、不意に人の気配があって扉が中から開いたの。
「ランド! リョウは? リョウは大丈夫?」
 ランドは1人きりで、外に出たあと後ろ手に扉を閉めた。まるで、会話を中にいるタキに聞かれまいとするかのように。
「ああ、怪我の方は大丈夫だ。さっきも言った通り、数は多いが1つ1つはそれほど深い傷じゃないからな。あれが本当にリョウなら、鍛えてるから心配することはない」
 その言い方から察するに、ランドはまだ少しリョウのことを疑っているみたいだった。