真・祈りの巫女133
 しばらく考え込んでいたランドは、やがて顔を上げた。
「……判った。どっちにしろこのまま放っておく訳にはいかねえ。ユーナ、こいつをどこに連れて行くつもりだ」
 それについては、ランドが黙っていた間にあたしもいろいろ考えていたの。あたしの宿舎に運び込めたら1番よかったけど、今はオミもいるし、それにあたしの宿舎にいたら神殿のみんなにリョウのことを隠すことなんかできない。いずれ判ってしまうことだったけど、今は少しでも時間を稼ぎたかったの。せめてリョウの意識が戻って、リョウが自分でみんなを説得することができるようになるまで。
「リョウの家に連れて行って。そこなら神殿から遠くないし、あたしも看病に通えるから」
「リョウの家、か。村へ運ぶよりはマシだな。だがリョウはオレよりでかいし……。ユーナ、少しだけここで待ってろ」
 あたしが不安な気持ちでランドを見送って、しばらくリョウの苦しそうな顔を見つめてじりじりしながら待っていると、かなり時間を置いて再びランドが戻ってきたの。その時ランドは手に担架を持って、うしろにはタキを従えていたんだ。
「タキ……」
「祈りの巫女! リョウが生き返ったっていったい……」
「怪我をしてるの! お願いタキ、リョウを助けて!」
 どうしてランドがタキを連れてきたのかは判らなかったけど、今はそんなことを追求する気はなかった。タキは横たわるリョウを覗き込んで、そのあと信じられないような顔であたしを見つめる。そしてやがて、気づいたように目を見開いたの。
「まさか、君は祈ったのか? リョウの復活を神様に祈ったのか!」
 自分が戒めを破ったことをタキに責められているのが判って、あたしはそのうしろめたさに答えることができなかった。
「なんでそんなことを……! このことがみんなに知れたら、君はどうなるか……」
「あたしのことなんかいいの! それよりリョウを助けて! リョウを助けるために力を貸して!」
「ユーナ、見た目はひどいがリョウの傷はそれほど深くねえ。心配するな。タキ、リョウを運ぶのを手伝ってくれ」
 いつの間にかリョウを担架に移し終えていたランドがそう言って、まだ心を決めかねていたタキを促した。