真・祈りの巫女128
 リョウ、今のあたし、すごく醜いだろうね。きっとリョウが好きでいてくれたユーナとは別人みたいだと思う。でもね、あたしはそれでもいいと思うの。だってあたしはもう誰にも愛される必要がないんだもん。リョウがいなくて、それでも生きていかなければならないあたしには、影を憎む以外に生きる道が見つからなかったんだもん。
 それでもね、リョウ。あたしはリョウが恋しい。リョウのことを好きだって、その純粋な想いだけで生きてた自分が愛しい。……きっと、愛しいと思う気持ちが強ければ強いほど、憎しみも強くなるんだね。心の空白が大きければ大きいほど、影を憎む気持ちも大きく育っていくんだ。
 ……リョウ、どうして? どうしてあなたがいないの?
 あたしのことを嫌いになったの? ……そんなはずないよね。あたしがリョウのことを好きなのと同じくらい、ううん、少なくともあたしの半分くらいは、リョウもあたしのことを好きでいてくれたよね。それなのに、どうしてリョウが死んじゃうの? どうしてあたしのところに帰ってきてくれないの……?
 リョウ、お願い、あたしのところに帰ってきてよ。だってあたし、リョウがいなかったらぜんぜんダメなんだもん。祈りの巫女にも、普通の女の子にも、なんにもなれないんだもん。このまんまじゃあたし、どんどん嫌な子になっちゃうよ。
 誰か、リョウをかえして。誰でもいいからリョウをかえして!

 リョウをあたしにかえしてよ!!

  ―― その時、不意に目の前のろうそくの火が消えた。
 あたしはハッとしてあたりを見回した。それまであたしは自分が神殿にいることすら忘れていて、だから少し驚きもあったのだけど、でもそれよりももっと奇妙な感じがあたしを捉えたの。なんだかいつもの神殿と違う。月はまだのぼっていなくて、ろうそくが消えて周囲は真っ暗になってたけど、でもそんなあたりまえの変化じゃない変化が神殿に起こっていたの。
 どこかで低いうなりが聞こえる。足元から凍りつくような冷たい空気が流れて、何か見えない気配が徐々に周囲を覆っていく。暗闇が次第に密度を増していく。