真・祈りの巫女115
 守りの長老宿舎へノックをして入ると、既に4人の巫女と担当になっている神官たちは集まっていた。会話の邪魔をしないように空いている席に腰掛ける。ひと通り顔を向けると、みんな一様に疲れた表情であたしを見返した。たぶんあたしも同じような顔をしてるんだろう。
 昨日の影の襲撃での被害状況を話し終えた守護の巫女は、最後に亡くなったのがリョウ1人だったことを付け加えて、あたしに言った。
「祈りの巫女、あなたには本当に気の毒なことだったわ。……死者の魂が安らかなる事を」
「……ええ、ありがとう」
 他のみんなも、次々にあたしに向かって哀悼の意を表してくれる。たぶんみんな、正直あたしに何を言ったらいいのか判らなかったんだろう。形式的な言葉を簡単に述べただけで、すぐに目を伏せてしまう。逆にあたしはみんなを心配させないように、必死になって顔を上げていた。
「狩人のリョウの働きで、影の1つを倒すことができたわ。南の草原に死骸があって、ようやく私たちは影の姿を見ることができたの。今朝早く神官の1人が簡単な絵を書いてきてくれたわ。……これが、村を襲った影の正体よ」
 守護の巫女が1枚の紙をテーブルの上に広げた。その絵を全員が覗き込む。この絵は、たぶん急いで書かれたようで、本当に簡単な線でしか書いてなかったのだけど……。
 影は、ものすごく奇妙な形をしていた。
 パッと見たとき、最初は紙のどちらが上なのかがよく判らなかった。よく見ると隣に大きさを測るための人型が書いてあって、高さだけでも人の1.5倍くらいはあったの。身体が全体に四角張った感じで、どちらが前なのかも判らないくらい。四角張った身体の上の方に少し飛び出したコブのようなものがあって、たぶん前だと思われる方には何か細長いものが縦についている。これが頭だとするとあんまりにも平たすぎるから、これはもしかしたら腕の一種なのかもしれないけど、だとしたら頭はどこなんだろう。……以前タキが言ってたことを思い出した。影は頭も尻尾もよく判らなくて、とにかく大きかったんだ、って。
 その絵を覗き込んでいたほかの巫女たちも、あまりに異様な姿に何も言えなくて、部屋の中はしんと静まり返っていた。