真・祈りの巫女113
 泣きながら、あたしは1口食事を口に入れて、泣いて、飲み込んだ。だからテーブルの上の食事をぜんぶ食べるのに、すごくたくさんの時間をかけなければならなかった。無言で食事するあたしを、カーヤはずっと見守ってくれていたの。食事の途中でタキがやってきたけど、カーヤが何か合図でもしたのか、宿舎の中へ入ってくることはなかった。
 食事が終わるまで、あたしは泣いていてもいい。食事が終わったらあたしはまた祈りの巫女に戻らなければならなかったけど、守護の巫女は食事が終わってから集まるようにって言ったんだもん。食事している間はあたしはただのユーナなんだ。そう、泣くのを許してもらっている気がして、ゆっくり1口ずつ食事を詰め込みながら、泣きながら、あたしはいろいろなことを考えていたの。
 カーヤ、あたしが今泣いている理由が、たぶんあなたには判らないね。でも、カーヤはいつもあたしのことを心配してくれる。あたしがいなくなれば必死で探してくれる。あたしの弟だから、オミを優しく世話してくれる。さっきは判らなかったけど、きっとカーヤはオミに頼んでくれたんだ。もしもあたしが帰ってきたら、できるだけ引き止めておいて欲しい、って。
 そして、訳も判らず泣いているあたしを見て、その時間を守ろうとしてくれる。迎えに来たタキを遠ざけて、あたしが泣くことを許してくれる。カーヤ、あなたは優しいね。だからあたし、あなたの料理で泣くことができたのかもしれない。
 オミ、苦しいよね。身体中が痛くて、目を閉じると父さまと母さまの死に様が浮かんで、いたたまれなくなるよね。それでも、あたしの傍にいるって言ってくれた。あたしのことを心配して、必死になって引き止めてくれた。……リョウのことを考えるとまた涙が出てくるよ。あの時はリョウのために泣くことができなかったのに。
 リョウ、あたしのことを好きだって言ってくれたリョウ。あたし、もしかしたらあなたの運命を変えちゃったのかもしれない。リョウは本当は、あたし以外の人と結婚するはずで、そうしていたらもっと長生きできたのかもしれない。あたしがリョウを好きになったから、リョウがあたしを好きになってくれたから、リョウの運命は変わってしまったの……?
 ……もしかしたら、リョウは父さまと話をして、自分があたしの結婚相手じゃないことを知って、ショックを受けたのかもしれない。たとえその時ショックじゃなかったとしても、少しでも認められようと焦って、影に向かっていったのかもしれない。
 間違いなくリョウは、あたしがリョウを好きになったから、こんなに早く命を落とすことになってしまったんだ。