真・祈りの巫女103
「ユーナ、どうして黙ってるの? しっかりして。あたしのこと判る?」
 カーヤがあたしの両肩を掴んでゆすぶったから、ようやくあたしはカーヤを見上げることができた。
「ええ、もちろん判るわ。カーヤでしょう?」
「……どうしてなの? リョウが死んだのにユーナ、どうして笑うの?」
 カーヤに訊かれて、でもあたし、自分がなぜ笑ってたのか、そもそも自分が今笑ってたことすら、自分で判らなくなっちゃってた。……そうだ、あたし、立ち上がろうとしてたんだ。顔を洗いたかったし、それに巫女の会議に出席にないといけないんだもん。
「カーヤ、あたしを台所まで連れて行ってくれる? 顔を洗いたいのになぜか立てないの」
「……ええ、判ったわ。あたしの肩につかまって」
 そうしてふらふらしながら台所まで行って、リョウがくれた髪飾りを直して落ちてこないように止めたあと、顔を洗ってやっと少しだけ落ち着くことができたんだ。
 カーヤが差し出してくれた手ぬぐいを使って顔を拭いて、心配そうに見守るカーヤに、あたしは微笑んで見せた。
「髪を直さなきゃ。昨日あのまま寝ちゃったから、ぐちゃぐちゃになってるでしょう?」
「……そうね。あたしも手伝ってあげるわ」
「ありがとう、カーヤ。……今、どのくらいの時刻? もう会議が始まっちゃう頃?」
 カーヤと一緒に再び部屋に戻って、鏡の前に座ると、カーヤはうしろからあたしの髪を梳ってくれた。
「まだそんな時間じゃないわ。早い人は宿舎で朝食を摂ってると思うけど、昨日までみんな働き詰めだったから、まだ寝てる巫女の方が多いくらい。会議にはタキが迎えにきてくれるから、心配は要らないわ。……ユーナ、もう少し寝ていてもいいのよ」
「いいわ。もう起きちゃったもの。それよりお腹がすいちゃったみたい。朝食の支度をしてくれる?」
 そういえばあたし、昨日は村に降りてすぐに祈りを始めちゃったから、夕食も食べてないんだ。カーヤはずいぶん心配そうにあたしを見ていたけど、あたしがそれほど落ち込んでないって判ったのか、髪が整うとすぐに朝食の支度を始めてくれた。