真・祈りの巫女93
 今回、かろうじて葬儀を行うことはできたけれど、さすがに埋葬まで行う時間はなかった。3回目の災厄は日没直後にやってくるから。棺は広場に並べたままで、村の人たちは今度は自分が神殿に避難するため、すぐに自宅へと散っていった。本当はあたしもすぐに神殿に戻らなければならなかった。だけど、聖櫃の巫女はあたしに声をかけずに1人で神殿へと戻ってしまったから、残されたあたしとリョウの2人は、広場の片隅でほんの少しだけ話すことができたんだ。
 本当はリョウもすぐに行かなければならなのだろう。たぶん、あたしの両親のために無理して葬儀に参列してくれたんだ。周りに人がいなくなった時、リョウはあたしを力強く胸に押し付けるように抱きしめたの。
「ユーナ……ごめんユーナ! オレがついてたのにこんなことになっちまって……」
 そう、か……。リョウはあたしの両親が死んだことで責任を感じてるんだ。あたしがオミに対して責任を感じているように。震える手で抱きしめてくれるリョウが愛しくて、あたしはリョウの背中に腕を回した。
「リョウが悪いんじゃないよ。だって、あたしはあの時ずっと祈ってたんだもん。……リョウだって聞いたでしょう? 村のみんな、あたしの祈りが神様に通じなかったって、噂してたでしょう?」
 リョウが動きを止めて、あたしは自分の想像が間違ってなかったことを知った。村についてからはあたしに面と向かってそんなことを言う人はいなかったけど、影が好き放題村を蹂躙したから、みんなあたしの噂をしていたんだ。
「……もっと、オレがちゃんと影を食い止められてたらよかったんだ。そうしたらユーナを悪く言う奴なんか1人もいなかったのに」
 リョウはあたしを抱きしめるのをやめて、顔を覗き込んだ。
「今夜は必ず奴を食い止める。おまえの祈りを本当にする。もうぜったいにユーナに辛い思いなんかさせないから」
 その言葉であたしも気づいたの。リョウはあたしの両親のことだけで責任を感じてたんじゃないんだって。あたしがみんなに悪く言われたから、その責任も自分にあると思ってるんだ。あたしの祈りがちゃんと神様に通じなかったから。
 違うよリョウ。あたしの祈りが通じないのは、あたしの力が足りないからなの。リョウが悪いんじゃないよ。
 そう、言葉に出す前に、いつの間にかランドがあたしたちに近づいてきていたの。