真・祈りの巫女92
 村の広場での合同葬儀に、あたしは死者の親族の1人として参加していた。そこには今回亡くなった19人それぞれの親族や親しい友人たちがおおぜいきていたから、広場は参列者でごった返しているように見えたくらい。実家の近所に住んでいる人たちもたくさんいて、あたしの顔を見て思わず涙を流したのは生前の母さまといちばん仲がよかったフーミ。遠巻きにしているのは血縁のない人たちで、その中にはランドの奥さんのミイもいた。
 仮ごしらえの祭壇の前で聖櫃の巫女が葬儀を進行する。19人の遺体はみな棺に納められていて、表面に書かれた文字の中にはあたしの両親の名もあった。聖櫃の巫女が1人1人の名前を呼んで、文字が読めない村の人たちのために棺を指し示すと、そのたびに参列者からすすり泣きが上がってそれぞれの棺に献花を行う列ができた。
 やがて父さまと母さまの名前が呼ばれて、手にした花をあたしが最初に棺に捧げる。棺の蓋は閉じられていて顔を見ることはできなかった。他の棺もほとんどが閉じられたままになっているんだ。たぶん遺体の損傷が激しいからなんだ、って、呆然とした頭であたしは思ったの。
 1輪の花を捧げて、神殿以外の場所で行う簡式の祈りを父さまと母さまに捧げる。その時だった。背後の気配に顔を上げると、あとから献花にきたリョウがあたしを見下ろしているのが見えたんだ。
「リョウ……」
 苦しそうな、少し戸惑っているような、リョウの表情だった。まるであたしにかける言葉を失ってしまったかのように、唇をきつく噛んで。
「リョウ……きてくれてありがとう。忙しいのに……」
「……ユーナも。よくこられたね」
「守護の巫女が許してくれたの。……守護の巫女の母さまも亡くなってるのよ。でも彼女はこられなかった……」
 リョウは何も答えずにあたしの肩を抱いた。気を落とすな、って言ってくれているみたい。
 でも、あたしの気持ちは複雑で、リョウの腕の中で涙を流すこともできなかった。