真・祈りの巫女78
 タキは1枚の紙をあたしに手渡しながら言った。
「今回の災厄で死んだのは19人、その中には祈りの巫女の両親や、カーヤの弟も入ってる。あと、主だったところでは守護の巫女の母親と、運命の巫女の娘か。名前はここにまとめて書いてあるとおりだ」
 紙に書いてある父さまと母さまの名前を、あたしはまだ信じられない思いで見ていた。……守護の巫女の母さまも死んでいたんだ。昨日会ったときには、そんな素振りは少しも見せていなかったのに。
「守護の巫女と運命の巫女にお悔やみを言わなくちゃ。……カーヤにも」
「うん、そうだね」
「……マティも怪我をしたのね。お店はどうなったのかしら」
「さあ、そこまでは判らない。次に村に降りた時に見てきてあげるよ。今朝は怪我人の名前を調べるだけで精一杯だったから」
 そうか、タキは明るくなるとすぐに村に下りて、あたしの目が覚めるまでにって、これだけの名前を調べてきてくれたんだ。タキはたぶん昨日からほとんど眠ってない。あたしは紙から視線を上げて、タキの顔を見つめた。
「タキ、ありがとう。疲れたでしょう? あたし、これからまた神殿で祈りを捧げるわ。その間に少しでも休んで」
 そう言って微笑みかけると、タキは少し照れたように頭をかいた。
「オレのことはいいんだけどね。祈りの巫女は? 弟の看病でほとんど寝てないんじゃないの?」
「そうでもないわ。だってさっきまで眠ってたんだもの」
 その時、ちょうどカーヤが宿舎に帰ってきたから、あたしは椅子から立ち上がった。カーヤはあたしたちの会話を邪魔しないように、ずっと声をかけないで出入りしていたんだ。
「お帰りなさいカーヤ。オミのことでは忙しい思いをさせてごめんなさい」
「え? いいのよ、そんな。改まってそんなこと言わないでよ」
「それから……弟さんのこと聞いたわ。ごめんなさい、あたしの力が足りなくて……」