真・祈りの巫女75
 食卓に向かい合わせに座ったカーヤとタキは、あたしが部屋から出て近づくのを息を飲んで見つめていた。そんな2人を交互に見て、笑顔を浮かべて挨拶する。
「おはよう、カーヤ、タキ」
「……おはようユーナ」
「おはよう、祈りの巫女」
 一瞬遅れて、2人も挨拶を返してくれる。あたしが2人の会話を聞いていたかどうか探ろうとしているみたい。さっきまで2人が話していたことなんて、あたしが聞いていたとしてもどうってことないのに。
「オミのことでは心配をかけてごめんなさい。ローグが痛み止めをくれたから、ずっと静かに眠ったままだったわ。傷が深いからまだしばらくは起きられないと思うけど、ローグも傷が治れば元のように生活できるだろうって言ってたから、心配はいらないと思うの。あたし、これからはできるだけオミを看病するわ」
 そう言いながらテーブルの自分の席に腰掛けると、カーヤは台所からお茶を1杯運んできてくれた。
「ユーナ、オミの世話はあたしに任せて。あたし、人の看病は慣れてるから」
「え? でも……」
「動けない人の看病って、慣れていないとなかなかうまくいかないわ。ユーナには祈りの巫女の役目もあるから、オミの世話をぜんぶやるのは無理よ。それに、慣れない人に看病されるのは、オミの方も大変だと思う。ね、あたしに任せて」
 カーヤはそう言ってくれて、あたしは嬉しかったけど、少し後ろめたい気持ちにもなっていたんだ。でも、カーヤが言う通り、あたしがオミの世話をしていたらどうしても祈りの巫女の役目がおろそかになる。この村にはあたしのほかに祈りの巫女はいないんだもん。これからの村のことを考えたら、カーヤの提案はもっともなことだった。
「……カーヤにお願いしちゃってもいいの?」
 カーヤはにっこり微笑んで、あたしの甘えを許してくれた。