真・祈りの巫女71
 神殿前広場は避難所が立ち始めていて、だいぶ狭くなってしまっていたけれど、そこには今もたくさんの人たちがいて情報を交換しあっていた。次々と運ばれてくる怪我人たちを、神官や巫女の宿舎の空いているベッドに振り分けている。そこにはカーヤもいて、あたしを見つけると駆け寄ってきたの。たぶんカーヤはあたしのことを探していたんだ。
「ユーナ! ……両親のことは聞いたわ。あたし、なんて言ったらいいか……」
 あたしはそれ以上聞きたくなくて、唇を固く結んで激しく首を振った。そんなあたしの反応はたぶん異常だった。カーヤもそれを感じたようで、あたしにそれ以上両親の話をしようとはしなかった。
「怪我人がどんどん増え続けてるの。今回は火事で家を無くした人も多かったから、怪我をした人のほとんどはここへ運ばれてくるわ。今はまだ共同宿舎で間に合うけど、いずれは祈りの巫女の宿舎にも怪我人を運び込まなければならないかもしれない。あたしもできるだけ他へ回してもらうようにするけど」
 あたしの宿舎には、空いているベッドが2つある。おそらくカーヤも他の巫女もかなり混乱しているのだろう。あたしが怪我人を受け入れることを拒むはずなんかないのに。
「その時はいつでも来てもらって。いちいちあたしに断らなくてもいいから」
「判ったわ。守護の巫女にもそう伝えておくわ」
 カーヤと話している間にタキは用事を済ませたようで、すぐに戻ってきていた。
「ランド、祈りの巫女の弟はもうすぐにでもくるのか?」
「ああ、もうくる頃だな」
「年はいくつになるんだ?」
 どうしてタキがそんなことを訊くのか判らなかった。ランドもそう思ったようで、不思議そうな顔で返事をした。
「確か13か4か……。それがどうかしたのか?」
「13歳だともう子供じゃないな。……今見てきたら、神官の共同宿舎のベッドがないんだ。明日になればいくつか空けられるんだけど」