真・祈りの巫女69
 あたしはすぐに駆け出して、神殿の扉を開けて外に飛び出した。いったいあたしは何を探していたんだろう。周りで忙しく動き回る人たちに紛れ込んで、その中に父さまたちがいないかどうか、きょろきょろしていたの。そんなことをしたって、ここにいる人たちの中にあたしの家族がいるはずなんかなかったのに。
 まだ夜明けにはかなり時間があったのに、神殿の周りはたいまつが灯されて、ふだんよりもずっと明るくなっていた。それでも怪我人の搬入に忙しい神殿の人々は、あたしが誰なのかすら気づいていなかった。恐怖と不安にあたしは混乱していて、自分が何をしているのかも、何をどうしたいのかも判っていなかった。うろうろ動き回って、ようやく村への坂道を降り始めようとしたとき、うしろから誰かに腕をつかまれたんだ。
「ユーナ! おまえ、なにやってるんだ!」
 捕まれた腕を返して、あたしは無意識にその誰かから逃れようとしていた。
「落ち着け、しっかりしろよおまえ! 今うしろからオミを乗せた担架がくるところだ」
 ふっと、あたしは我に返ったみたい。気がつくと神殿を出たときからの記憶がすっぽり抜けていて、目の前には必死の形相のランドが立っていたんだ。
「ランド……」
 あたし、力が抜けたようにランドの胸に倒れ込んでいた。ランドはあたしを受け止めて、やさしく抱き寄せてくれる。そのままあたしは少し泣いたような気がする。自分がどうして泣いているのか、それすらも判らないで。
「ユーナ、両親が死んで悲しいのは判る。……だけど今は泣くな。もうじきオミがくるんだ」
 あたしが顔を上げると、いつのまにかタキも近くにいて、あたしの様子を見守っていた。
「オミは……オミは助かったのね。生きてるのね!」
「ああ、生きてる。だけど全身の怪我はひどいんだ。しかも目の前で両親を失ったからな、かなりショックを受けてる。……ユーナ、おまえはあいつの姉さんだろう? おまえはあいつのためにしっかりしてやるんだ」