真・祈りの巫女67
 意識を取り戻したとき、あたしはタキに上体を抱き起こされて、顔を覗き込まれていた。
「 ―― 祈りの巫女……。よかった、気が付いたね」
 あたりは暗くてタキの顔があまりよく見えなかった。どうして自分がそんなところにいるのかが判らなくて、無意識に周囲を見渡してみる。神殿の祭壇の前、灯したろうそくは半数が消えていて、かなりの時間が経っていることが判る。あたしはここで祈りを捧げていたんだ。祈りの最中に眠ってしまうなんてこと、今まで1度もなかったのに。
「……タキ、あたし、寝てたの……?」
 身体を起こしながら言うと、タキはちょっと困ったような顔をした。
「寝てたっていうか、オレは気を失ってるんだと思ってたけど。……寝てたの?」
 確かにタキが言うとおり、気を失っていたって方がずいぶん感じがいいみたい。タキには曖昧にごまかして、立ち上がろうとしたらちょっとだけふらついたんだ。なんだかすごく疲れてるよ。タキはあたしが立ち上がるのを助けてくれて、それからも隣で支えながら扉の方に歩いていった。
「ねえ、タキ。あたしがここに入ってから、どのくらい経ってるの?」
 今までは気が付かなかったけれど、神殿の外はかなりたくさんの人が行き交っているようで、喧騒がここにも届いてきてる。タキは少しだけ言いづらそうに目を伏せた。
「……村が影に襲われて、それからしばらくして影が去っていったあと、村の火事をぜんぶ消し止めて、行方の判らない人の名前が神殿に届くくらいには。……祈りの巫女、君はずっと祈っていたのか?」
「ええ。少なくとも2つ目の影が村に来たところまでは。そのあとのことがあまりよく思い出せないの。いつもの祈りの儀式ではこんなことはないのに……」
 ふと、タキは足を止めて、あたしに肩を貸すのをやめた。
「だったら、君はまだあのことは知らないんだね。……その、2つ目の影がいったい何をしたのか」