真・祈りの巫女54
 宿舎の神官はみんな忙しくて、それでも断片的に話を聞いたところ、今は守護の巫女と聖櫃の巫女が村に降りているらしかった。普通の時なら、村の人が死ぬと亡骸を神殿に運んで葬儀をして、また村に戻って埋葬をする。でも今回はそこまで手間をかけられないんだ。日が落ちる前に村で葬儀をしてそのまま埋葬してしまうのだと、神官の1人は教えてくれた。
 タキが戻ってくるまでの間、あたしは神殿でライのために祈りを捧げていた。ライの苦痛を和らげて、災厄に砕かれてしまったライの足をできる限り元に戻してあげるために。
 祈りを終えて神殿の扉を出ると、村から戻ってきたタキが、あたしの祈りが終わるのを待っていてくれたんだ。
「お疲れ様、祈りの巫女」
「タキこそ疲れたでしょう? わがまま言ってごめんね。ちゃんとご飯食べた?」
「ご飯? ……ああ、実家に寄って食べてきたよ。ついでにいろいろ話もできたからちょうどよかった。これ、頼まれてた名前」
 そう言って、タキはあたしに1枚の紙を渡してくれたの。その中には、人の名前のほかに亡くなった人との関係なんかがびっしりと書き込まれていたんだ。
「ありがとう。これからさっそく祈るわ」
「少し休んでからの方がいいよ。オレも村で聞いてきたことがあるから、休憩しながら少し話をしよう」
 タキが案内してくれたのは、神殿の下にある書庫の作業場の1室だった。ここで作業する神官はいつもは10人前後いるのだけど、今日は日常の仕事はぜんぶお預けになってるから、書庫の方に2、3人が出入りしているだけで静かだった。
 タキが話し始めるよりも早く、あたしは切り出していた。
「マイラたちのお葬式が村で執り行われるって聞いたわ」
「ああ、もうそろそろ始まる頃じゃないかな。なにしろ今回は1度に12人も亡くなって、棺を神殿に運び上げているだけの余裕がないからね。それに、亡骸の損傷がかなり激しいんだ。夏の最中だし、早く埋葬してあげないとかわいそうだから」
「あたし、マイラに会いたいの。マイラに最期のお別れをすることはできない?」