真・祈りの巫女50
 少しだけ眠って、目が覚めた時、あたしは祈りの巫女に戻っていた。勉強部屋の窓から差し込む光の角度で、既に午後になっていることが判る。1度自分の部屋に戻って髪を直して、リョウからもらった髪飾りをつける。そう、リョウはいつでもここにいるんだ。あたしの髪をなでて、ユーナ頑張れ、って言ってくれるの。
 宿舎の扉を出て、見知った顔を探しながら神殿前広場にくる。お昼寝の前に見たときには土台しかできてなかった小屋は、あたしが眠っていたわずかな間にほとんど完成したんじゃないかってくらい出来上がっていたの。この分だと今日中に1つは完成しそう。きこりのみんなは、家を失った人たちができるだけ早く快適に過ごせるように、すごく頑張ってくれているんだ。
 あたしはタキを探しに神官の共同宿舎へ行くと、扉の前でちょうど出てくるところだった神官と行きあった。
「あ、祈りの巫女、目が覚めたの?」
「ええ。タキを探しているの」
「タキはまだ戻ってないけど、ライが運ばれてきてるよ。中にいるからよかったら会っておいで。オレはこれから薬草を取りに行かなきゃならないから、一緒に行ってあげられないけど」
 ライがここにきてるんだ。あたしは神官にお礼を言って、開けてくれた扉から中に入った。宿舎の中は少しざわついていて、食堂で薬の調合をしていた神官のリドにライの居場所を聞いて、あたしは廊下を中へと進んでいく。行ってみたら場所を聞くまでもなかった。その部屋はドアが開いたままで、中からは神官たちの声と、ライの小さな泣き声が聞こえていたから。
「 ―― 痛いよなぁ、ライ。だけどもうちょっとで終わるからなー。あと少しだけ我慢しろよ。男の子だろう?」
 中には3人の神官がいて、そのうちの1人がライを励ましながら治療をしていたみたいだった。入口近くにいた神官があたしに気付いて会釈してくれる。治療が終わるまでは邪魔をしないように、あたしはうしろから静かに見守っていたの。
 やがて、治療をしていた神官が立ち上がって、それを合図に入口にいた神官が近づいていって、あたしのことを知らせてくれたみたい。振り返った神官はあたしに微笑んで、ハンカチで手を拭きながら近づいてきた。