真・祈りの巫女48
 あたしの宿舎は部屋が3つあって、それぞれの部屋にベッドが合計4つ置いてある。1つはあたしがふだん寝起きしている部屋で、1つはあたしが勉強に使っている部屋。その2つの部屋には1つずつのベッドがあって、カーヤが使っている部屋にだけ2つのベッドが置いてあるんだ。これから先、あたしの世話係の人数が増えたり、若い巫女が修行にきたりしたときには、空いているベッドがいつでも使えるようにしてあるの。今回リョウがあたしを連れてきたのは、勉強部屋にある方のベッドだった。
「どうして? あたしの部屋は隣なのよ」
「ここじゃ眠れない?」
「ううん、そんなことないわ。遅くまで勉強した時はズルしてここで寝ちゃうこともあるから」
「だったらいいだろ? ……オレもね、ユーナの生活空間ていうか、直接そういうところに入るのにはちょっとだけ抵抗があるんだ。まかり間違って変な気を起こさないとも限らない」
 なんだか今日のリョウは本当にいつもと違っていて、あたしは驚くと同時に少し嬉しかった。今が非常事態だからなのかな。リョウは少しだけ興奮していて、だから無意識のうちにふだんと違う行動を取ってるのかもしれない。
 いつもよりも素直なリョウは嬉しくて、ちょっとかわいくて、だからリョウの言う通りあたしはベッドにもぐりこんでいた。
「ねえ、リョウ。あたしが眠れなかったら、リョウはずっとここにいてくれるの?」
 リョウはあたしの勉強机から椅子を引いてきて、枕もとに座ってあたしの顔を覗き込んでいる。リョウの表情は優しくて、でも少しだけ戸惑っているようにも見えた。
「ずっと一緒にいたいけどね。でも、約束してるから行くよ。ごめんね、ユーナ」
「ううん、リョウは悪くない。リョウのことをみんな頼りにしてるんだもん。あたしが独り占めしちゃいけないんだ」
「ユーナ、目を閉じて」
 あたしが言われたとおりに目を閉じると、リョウはそっと近づいてきて、まぶたにキスをした。それから頬に触れて、そっと、唇にキス。リョウの息が近すぎて、ちょっとドキドキして、あたしは上手に呼吸することができなかった。