真・祈りの巫女49
「ユーナ、……オレのユーナ」
 耳元、すごく小さな声でリョウはささやいている。優しくて、気持ちよくて、なんだか眠くなってくるみたい。そういえばあたし、昨日はほとんど寝てなかったんだ。自分の名前はすごく耳に心地よくて、それだけで子守唄を聞いているような気分になるの。
「ユーナ、オレがいなくても、他の男と浮気するんじゃないぞ」
 そんなことしないもん。声を出して返事をしようと思ったけど、なんだかうまく伝わる気がしなくて、あたしはわずかにうなずくことで答えた。
「どうしてかな。何回約束してもらっても安心できない。オレはいつも不安で、ユーナがどこかへ行っちまいそうで怖いんだ。ユーナに会うたびに怖くなる。嫌われてないか、もうオレのこと好きじゃなくなってるんじゃないかって」
 リョウ、どうしたの? 今日のリョウは本当に変だよ。なにをそんなに不安に思っているの? あたし、リョウを不安にさせるようなこと、今まで1度もしたつもりないのに。
 目を開けて、あたしに覆い被さるように頬を寄せていたリョウを、あたしは両手で抱きしめた。
「リョウ、大好き……」
 リョウはちょっと驚いた感じで身じろぎした。まるでこの一瞬、あたしがここにいるってことをリョウは忘れていたみたい。
「あたし今までたくさんリョウにそう言ったもん。でも、今のリョウがいちばん大好き。離れていて不安になったら思い出して。あたしが今までリョウに言ったたくさんの大好きと、今の大好きのこと。……あたしも思い出すから。リョウがくれたたくさんのキスと、こうして抱きしめてくれた腕のこと」
 言葉の途中から、リョウはあたしを抱きしめて、首筋に顔をうずめていた。リョウが不安に思っていることをぜんぶ受け止められたらいい。きっとリョウにはたくさんの不安があって、あたしに見せてくれるのはそのうちのほんの一握りにしか過ぎないと思うから。
 これからずっと、リョウのことを抱きしめてあげたい。怖いことなんかなにもないよ、って。
 リョウがかわいくて、愛しくて、まるで大きな子供を持った母親のように、あたしはリョウを抱きしめていた。