真・祈りの巫女47
 父さまはちゃんと判ってくれてる。あたしは祈りの巫女だから、村のことをいちばんに考えなければいけないんだって事。あたしの実家は西の森からは少し離れていて、通りからも少し奥まってるから、今回のような災厄ではそれほど危険な場所じゃない。それでもやっぱり心配だもの。もしもあの影が空を飛ぶような生き物だったら、どこに住んでいても危険に違いはないかもしれないんだ。
「……判ったわ。これから父さまに会うことがあったらそう伝えて」
「必ず伝える。……そういえばオミがね、父さんと母さんのことはオレに任せとけ、って。けっこう生意気なこと言ってたよ」
 あたし、そう言ったオミの得意そうな顔を想像して、ちょっと吹き出しちゃったよ。
「オミが? あの子頼りになるの?」
「まあ、小さくても男だからな、あいつは。今でも気持ちだけは一人前なんだ。……もっと大人になると判る。そのうちそんなセリフは軽々しく口にできなくなるよ」
 オミの話をしながら、リョウは自分のことを言っているのかもしれないって、あたしは思ったの。だけど、あとから思えばそれであたしはごまかされてしまったんだ。このとき、あたしはもっとリョウを追及して、父さまと交わした会話のことをきちんと訊くべきだったって。リョウがあたしに言いづらい何かを隠してるって、あたしはちゃんと感じていたのに。
「ユーナ、食事はもういいの? ちゃんと食べないとこれから先持たないよ」
 リョウに言われて、あたしは残っていた食事を何とか詰め込んだ。食事が終わったらリョウはきっと出かけてしまうから、できるだけゆっくり、でもリョウを心配させないようにできるだけ早く。
「リョウは? もう行っちゃうの?」
「ユーナが眠ったらね。カーヤに言われてるんだ。ユーナを寝かしつけるように、って」
「寝かしつける、って。あたし眠くなんかないよ。それに、あたしはもう子供じゃないもん。そんな言い方しないで!」
 リョウは笑いながら、でも半ば強引に、あたしをベッドまで引っ張っていってしまったの。