真・祈りの巫女45
 リョウの言葉であたしも気付いた。そうか、リョウは村の狩人だから、影の正体を探るためにまた村に降りなければいけないんだ。今別れたら、今度いつ会えるのかなんて判らない。本当は今ごろはもう村へ行ってなければならなくて、でもだからこそカーヤはリョウを引き止めて、あたしとリョウを会わせてくれたんだ。
「リョウ、……これから村へ行くの?」
 あたし、もしかしたらちょっと不安な顔をしていたのかな。リョウは我に返ったみたいにあたしの顔を見つめて、微笑んだの。
「マイラを殺した影を探しにね。うまく狩れるかどうかは判らないけど、せめて居場所だけでも判ってないと、村の人たちは安心して眠れないから」
 村の安全を守るのも、リョウたち狩人の大切な役目なんだ。普通の獣だったらリョウはぜったい負けたりしないって信じてるけど、家を押しつぶすくらい大きな獣なんて、狩人が何人いても狩れるかどうかなんか判らないよ。
「リョウ、お願いだから無理はしないで」
「正体も判らないうちからそうそう無茶はしないよ。昨日出た影は1匹だけみたいだし、今は村人を襲ったりもしていないようだから、居場所を探して警戒するくらいかな。心配しなくても大丈夫だよ」
 リョウはそう言ったけど、あたしは心配で、知らず知らずのうちにリョウの袖を掴んでた。今この手を離したら、リョウと2度と会えない気がして。
「今朝オレは夜明け前に起きたから、村に起こったことをぜんぜん知らなかったんだけど、昨日仕掛けた罠を見て1度戻った時に騒ぎを聞いてね。影の足跡も見てきたよ。ユーナはどんな足跡だったか聞いてる?」
 あたしの顔を覗き込んで、微笑みながらリョウは話し始めたの。そんなリョウはちょっとだけ興奮気味で、でも気負いはなくて、まるで日常の狩りの話をしている時みたい。あたしは返事をしなかったのに、リョウは勝手に解釈して続きを始めたの。
「かなり大きな獣なのは間違いないんだ。道の幅くらいの横幅で、遠くから見ると肩幅くらいで2本、引きずったような足跡がずっと続いていて、でも近くで見ると引きずった跡じゃないんだ。細かい足がいくつもあって、同じ間隔でちょこちょこ歩いたみたいに見える」